5月3日

ロンドン再上陸!

 
  日誌、長いことサボってごめんなさい。一年半振りに日本に里帰りし、五日前にロンドンに戻ってきたところです。東京で会ったみなさん、お世話になりました!行く先々で、「あ、このサイト知ってる!見てるよ!」と言ってくれた人、どうもありがとう。離れ小島での長い隠遁生活で干からびていた心が潤いました。では、さっそく、ロンドンのフレッシュなニュースを!と行きたいところですが、せっかく日本でギャラリー三昧の日々を送ったので、暫くは記憶を遡りながら、「東京おのぼり日誌」を書いていきたいと思います。とりあえず、4月15日分までまとめてアップしたのでよろしくどうぞ!(トコ)
   

4月15日

東京おのぼり日誌6:六本木、波の美術館で考える

 
 

前回帰国したときに行きそびれた六本木国立新美術館へ行く。着くが早いかガラスが波のように雄大にうねる黒川紀章の建築に惚れぼれ。中に入るといきなり最上階まで吹き抜け。床には優雅にカフェの円卓が並び、美術展を観なくてもここで寛ぐだけで満足しそうな感じ。日本に引き上げた暁には(残念だけど予定なし)、ここでコーヒーを飲みながら原稿を書きたいなあと思いながら、お目当ての「アーティスト・ファイル」の会場に向かう。

 
黒川紀章の建築が美しい六本木の国立新美術館。

作家8名で構成された展示は、白井美穂佐伯洋江祐成政徳市川武史竹村京さわひらきなど日本の若手から中堅の作家に、エリナ・ブロテルスポリクセニ・パパペトルーら外国勢2名を加えたグループ展。ドローイング、写真、映像、立体、パフォーマンス、参加型インスタレーション…と様々なメディアが含まれ、今の美術表現の幅の広さが実感できる。また、作家各自にゆったりとした個室が与えられているため、個展のような落ち着いたムードで鑑賞でき、展示室も天井の高いホワイトキューブといい感じ。展示品もドメスティック感溢れる竹村京の刺繍を使ったドローイングから、祐成政徳のパブリックアートサイズの気球のようなスカルプチャーまで見せ所を押さえているのだが、気になるのがなぜこの8名かということ。

一つの枠組みに入れるからには、そこに何らかの共通項があるべきだと思うのだが、それが見当たらない。手元のパンフレットを見ても、「現代のアートの世界で活躍するアーティストたちを紹介する展覧会」としか書いていない。

文化事業が地域経済に貢献する重要な産業とみなされ、世界各地でビエンナーレ、トリエンナーレが短期集客型のテーマパークのように設立されている今日、そのコンテンツ提供者である「世界で活躍するアーティスト」は、実のところおそろしく増殖している。その挙句にカオスと化しているのが、私が普段いるロンドンから見える現代美術をめぐる現状なのだが、国を代表する美術館としてこのカオス収拾にもう少し積極的になってもよいのではないか。ただ漠然とこんな物がありますよと見せるだけではなくて……。なーんてことを考えた。(トコ)

国立新美術館

作家のサイト(オフィシャル&ギャラリーHP)
白井美穂
佐伯洋江
祐成政徳
市川武史

竹村京
さわひらき
エリナ・ブロテルス
ポリクセニ・パパペトル

   

4月12日

東京おのぼり日誌5:渋谷のワンダーとナンヅカ

 
 

渋谷のギャラリー二軒を訪問。最初はトーキョーワンダーサイトのオープニングで、マティアス・シャーラーステファン・ディーン屋代敏博の3つの展示を鑑賞。ロンドン時代にfoglessを手伝ってくれていた、ギャラリーのスタッフの星野美代子さんに会場を案内してもらった。

最初の二人の展示者、シャーラーディーンは、国際推薦人制度という国際舞台で活躍するアート界の専門家により選ばれた作家とのこと。グッゲンハイム美術館シニア・キュレーターにより選ばれた前者は、バチカンにあるローマ教皇庁の枢機卿の執務室をシリーズ化して撮った写真シリーズを発表。一方、ブラジル生まれNY在住の美術家のヴィック・ムニーズご推薦の後者は、築地市場や渋谷駅前の雑踏を赤外線サーモグラフィーカメラで撮った映像と、新聞の気象地図に色をつけた平面作品を並べて展示。前者は一定のフォーマットに則って被写体を類型学的切り口で撮るドイツによくあるタイプの写真で(トマス・シュトルート、カンディダ・へーファー、リカルダ・ロッガンなどがその好例)、後者は抽象的なパターンメーキングを一風変わった道具とソースを用いて行なったものになる。

そして残りのひとり、屋代敏博は、実力派の若手を紹介するシリーズ展「TEAM (Tokyo Wonder Site: Emerging Artists on Mezzanine)」に選ばれた作家のようで、銭湯や美術館の完璧なる空間にくるくる回る物体(本人が回っているのだとか)がSF映画のように写る写真シリーズ《回転回》と、東京の街をひたすら走る男(これも本人だとか)を撮ったモノクロ写真シリーズを展示。屋代の作品は今回初めて見たが、発想が柔軟で、どこかお笑いに通じる痛快さがあり、自分のみならず他人をも巻き込むパフォーマンス性や、アンティークなステレオスコープを使った捻りのあるプレゼンの仕方など、既存のカテゴリーに収まるまいとする工夫が今回の3名の中で一番強く印象に残った。

次の目的地は渋谷駅の反対側、いまもっともエッジーなギャラリーと評判のナンヅカ・アンダーグラウンド。会場で『スタジオボイス』編集部の岡澤浩太郎さんに会う。ここら辺は皆さんの方がよくご存知かと思いますが、ギャラリーオーナーの南塚さんは20代の好青年ながらも(若く見えたので勝手に20代と呼んでます)、「メディアレイピスト」と称しボーダレスな創作活動を展開する宇川直宏から、横尾忠則と並ぶ日本グラフィックデザイン界大御所の田名網敬一まで、癖のある作家を手名づけるやり手のギャラリスト。まだオープンして2年たらずというのに、今年3月にはスペースを拡張し、上海やニューヨークのアートフェアにも出展するというウナギのぼりの勢い。

ここの得意どころは今の日本の現代美術の代表ともいえる大衆文化に首までどっぷり浸かったサブカル系のアートのようで、今回の個展では、姉川たくのエログロ、バイオレンスを幼児性の強い表現で包んだドローイング/刺繍画を展示。ドローイングの部分はデイヴィッド・シュリグリーやスタンリー・ドンウッドに似ていると思ったが、糸にこめられたおどろおどろしさは姉川氏特有。髪の毛もそうだが、だら〜んと垂れているものには気色の悪い生々しいパワーがあるようだ。(トコ)

トーキョーワンダーサイト
ナンヅカ・アンダーグラウンド

作家のサイト(オフィシャル&ギャラリーHP):
マティアス・シャーラー
ステファン・ディーン
屋代敏博
宇川直宏
田名網敬一
姉川たく

   

4月10日

東京おのぼり日誌4:渋谷区写真町人間交差点

 
 

写真三昧の一日。一軒目は、『スタジオボイス』で紹介されていたイラク戦争帰還兵のショッキングな写真を拝みに恵比寿のMA2ギャラリーに。これを撮った写真家は、ルー・リードからブッシュ大統領まで、セレブ、政治家、芸術家など世界の著名人を長年撮ってきたアメリカのポートレート・フォトグラファー、ティモシー・グリーンフィールド=サンダース。ギャラリーの一階と二階の展示室に、戦争で身体の一部を失った元兵士が、「これが私ご自慢の一張羅(いっちょうら)」とでも言わんばかりに義足や義眼をスマートにつけて写っていて、なんとも異様。

英国で見かけるイラク戦争絡みの写真というと、血まみれになった兵士が路上にうずくまってがもがいているシーンなど、いわゆる戦争の凄惨な部分を真正面から見つめたフォトジャーナリズムが目立つが、兵士をファッションや広告写真のように撮ったグリーンフィールド=サンダースの写真はその正反対で、それゆえに心を掻き乱される。

恵比寿のあとは、オランダの某写真家からその噂を聞きつけた写真専門の新しいギャラリー、ホワイト・ルーム・ギャラリーを探しに原宿に。表参道で15分ほど迷った後に、表参道ヒルズ向かいのGYRE(ジャイル)というショッピングセンター内に入っているのを発見。シャネルやブルガリなど高級ブランドが入っているデパート内に画廊とは意外だったが、日本には、そごう、大丸、パルコなどデパートが美術展のホスト役を務めるという特有の伝統があったことをふと思い出す。

展示作品はジョエル・マイエロウィッツの映像《The Elements: Air/Water Part1》。しなやかな肢体の男性が飛び込み台から真っ青なプールに飛び込む。するとカメラが、その水しぶきや水面の揺れ、抽象模様に分解された水の粒子を爽快感たっぷりに捕らえる。そんな綺麗ではあるが中身が空っぽな映像が、三枚のフラットスクリーンに流れていたが、NYのグラウンドゼロを激写した《Aftermath》の後にこんな癒し系を見てしまうと、あれで疲れてしまったのかなあ…といらぬことが頭に浮かぶ。少し残念だったのがプレゼンの仕方で、映像なのに部屋は煌々と明るいし、後ろのマルタン・マルジェラからは暢気なBGMが聞こえてくるしで、真剣に見ているのがちょっと気恥ずかしくなった。

この日の夕方は、写真雑誌『PhotoGRAPHICA』の編集部があるエムディエヌコーポレーションを訪問。連載開始後1年目にして晴れて編集部の沖本尚志氏とご対面、「どうも、はじめまして…」などと訳のわからぬ挨拶をしたあとミーティングに入る。その後、沖本氏と一緒に近くの写真専門のギャラリー、RAT HOLE GALLERYリー・フリードランダー「桜狩」展のオープニングに行くことにしたのだが、ここからが「人間交差点」の始まり。2月にロンドンで取材をしたマーコ・ボアがいきなり編集部の会議室に現れたり、『フォトグラフィカ』第7号で取材したスティーヴン・ギルとオープニングの会場でばったり再会するなど、舞台を東京に変えての偶然の再会が続いた。

ちなみにマーコはこの日、いま大学で執筆中の博士論文の取材のために沖本氏を訪問。その中の会話で私が後でここに来ると知って待機していてくれた。ギルの方は、EU・ジャパンフェスト日本委員会の写真プロジェクト「日本に向けられたヨーロッパ人の眼・ジャパントゥデイ」で3月に来日。鹿児島市立美術館での展示プロジェクトを終えて東京に戻ってきたばかりだった。これは後で本人から聞いたことだが、なんとマーコもギルと同じ「日本に向けられた…」の次期候補に決定し、早くも水戸で地元住民たちを撮影するプロジェクトを済ませ、今年秋には水戸芸で作品を発表するという。自分がロンドンで取材した作家が日本で受け入れられるというのは何とも嬉しいものだ。

その後RAT HOLEの会場で、EU・ジャパンフェスト日本委員会の菊田樹子さん、ライターのタカザワケンジ氏、編集者の土屋綾子さん、マグナムフォトの小川潤子さん、ユトレヒトの江口宏志氏、こちらのギャラリーのスタッフになっていた中島ふみえさんにも再会。会場にはフリードランダーの桜のモノクロ写真が満開。77年の初来日以来、79年、81年、84年と日本を訪れるたびに東京、奈良、京都、広島と日本列島を旅してファインダーに収めた桜の写真になる。日本人以上に桜を愛する異国人がとらえた儚い美。ご本人も来日して取材陣からフラッシュのシャワーを浴びていました。(トコ)

MA2ギャラリー
ホワイトルームギャラリー
PhotoGRAPHICA
RAT HOLE GALLERY
日本に向けられたヨーロッパ人の眼
鹿児島市立美術館

作家のサイト(オフィシャル&ギャラリーHP):
ティモシー・グリーンフィールド=サンダー
ジョエル・マイエロウィッツ
リー・フリードランダー
マーコ・ボア
スティーヴン・ギル

   

4月5日

東京おのぼり日誌3:京橋のクリちゃん〜清澄白河

 
 

この日、最初の一軒目は、foglessでずっと写真を撮ってくれていた昔の仲間、クリちゃんことKeiko Kuritaさんの個展のオープニングにお邪魔。会場は京橋PUNCTUM(プンクトゥム)で、ゴールドスミス・カレッジの卒業展で見たのとはまた一味違うアイスランドの雪景色を撮った写真と、新江ノ島水族館の協力のもと撮影した新作《aquaticwater》を発表していた。

 
Keiko Kuritaさんの個展の案内状から

両シリーズとも「水」にちなんだ何とも爽やかな作品で、アートブックや写真集で有名なあのUtrecht(ユトレヒト)から出版された後者の写真集をすかさず購入し、サインをしてもらった。日本に帰ってからも時々、「本が出ました〜」というメールをもらっていたのでクリちゃんの活躍ぶりは耳にしていたが、思っていた以上の出世に目頭が熱くなる。

サインをもらった後は、ギャラリストの寺本一生さんからギャラリーを開いたきっかけや倉田精二の写真などについて話を聞く。新聞サイズのフリーペーパー『PUNCTUM TIMES(プンクトゥム・タイムズ)』も一部もらい、その編集レベルの高さに、「これがタダ?」とびっくり。本の目利きとして有名なUtrechtの江口宏志さんからは、昔ホンマタカシ氏のアシスタントだったという野川かさねの写真集「山と鹿」について話を聞いた。

PUNCTUMの後はタクシーで清澄白河の合同オープニングへ。まずは、3年前のヴェネツイアビエンナーレで話題を呼んだロンドンベースの作家、ルナ・イスラムの新作《The Restless Subject》を観にシューゴアーツに直行。日本語でびっくり板と呼ばれる「ソーマトロープ」を撮った16ミリ映像のインスタレーションを見る。このソーマトロープとは、板の表と裏に鳥と鳥籠の絵がそれぞれ描かれていて、それを速く回転させることによって、鳥が鳥籠に入ってるようなイリュージョンを創り上げる装置になり、セル画を早く動かすことによって動画の視覚効果を創りあげるアニメーション原理の元祖版のようなもの。ルナ・イスラムの作品にはこれまでにも映像メディアの本質を暴くような要素がしばしば見受けられたが、この作品はまさにそのど真ん中。

ルナの後は、隣のタカ・イシイギャラリー五木田智央の何とも迫力のある絵画とドローイングを鑑賞。日本から長いこと遠ざかっているせいか、五木田氏の作品を見るのは今回が初めて。ネットで読んだ「美術界における猪木イズムの最後の継承者」という言葉にぴったりの、小さいながらもパンチの効いたドローイングが壁に何百と敷き詰められていて圧倒される。

 
タカ・イシイギャラリーでの五木田智央展の展示風景。

でも一番気になったのは白と黒のガッシュで創り上げられたキャンバス画の方で、平べったい女の顔から蛆虫が湧いたような一枚の絵画に釘付けになる。のっぺりとごっちゃりを組み合わせた形象的コントラスト、その対比が生むコラージュ的な立体的効果、バイオレントでサディスティックな表現が個性的で一度見たら忘れられない。なんとなくシュルレアリズムやキュビズムを思わせるところもあり、ローランド・ペンローズの蝶が女の目と口をついばんでいる油彩《Portrait of Valentine》やフェルナン・レジェのチュビズムと揶揄された《The Card Players》などを思い出す。

この日も例外に漏れず色んな人に会った。五木田氏の奥様の友絵さん、タグボートの石水美冬さん、Tomo Suzuki Japanの鈴木朋幸さん、元『美術手帖』編集部の阿部謙一さん、在ベルリンアーティストの竹村京さんと国立新美術館の研究員の橋本弥生さん、(株)アンテナの安田洋平さん、『Tokyo Source』編集長の近藤ヒデノリさん、『ARTiT』編集部の皆さんなどなど。いやしくもオープニングを名刺交換の場として使わせてもらった後、Miyake Fine Artの「フローリアン・ズースマイヤー」展、Zenshiの「小川泰」展、小山登美夫ギャラリーの「津田久美恵」展と「福永大介」展をさくっと見て『ARTiT』の柳下さんと一緒に退散。(トコ)

PUNCTUM(プンクトゥム)
Utrecht(ユトレヒト)
SHUGOARTS
タカイシイギャラリー
Miyake Fine Art
Zenshi
小山登美夫ギャラリー

作家のサイト(オフィシャル&ギャラリーHP):
Keiko Kurita
倉田精二
野川かさね
ルナ・イスラム
五木田智央
フローリアン・ズースマイヤー
小川泰
津田久美恵
福永大介

   

4月3日

東京おのぼり日誌2:有楽町でアートフェア東京

 
 

昨晩に続き、ライターの松下幸子さんと一緒にアートフェア東京2008のオープニング会場である東京国際フォーラムにお邪魔する。フリーズ、ズー、スコープとロンドンで腐るほど見てきたアートフェア。ニューヨークのアーモリー、スイスのバーゼルにも何度も行ったことがあるが、東京のアートフェアは今回が初めてとあって行く前からやや興奮ぎみ。

 
山本現代で展示されていた、ヤノベケンジのインスタレーション。今回もっとも盛大だった作品のひとつ。

108の画廊が集結した会場は、古美術、工芸、日本画、洋画、現代アートの全部が一箇所に集まった混在型とユニーク。現代アートに徹した欧米のフェアに慣れている私にとって、この寄せ鍋状態はよく言えば新鮮だが、お目当てのギャラリーが会場のわずか4分の1足らずという寂しい一面も。また、取り扱い作品も、絵画やオブジェなど、いかにも買いやすそうな小品が目立ち、コミッションワークやイベントなど思考を刺激する企画も目立たず(あったのかもしれないが気づかなかった)、とにかく「売り」重視という印象を受けた。アートの楽しみ方を「観る」から「買う」へと変えようとしているフェアなので、このアングルは理に適ってはいるのだが、物欲主義を煽るアートの見せ方(売り方)は、アートにより本質的な意味を求める私には寂しいものが…。プレスリリースに「アートを日本が誇る産業に」とあったが、芸術が完璧に産業化された日にはレビューなんぞ書く気も失せるだろうなと思う。

とはいえ、鴻池朋子(ミヅマアートギャラリー)、青木克世(レントゲンヴェルケ)、手塚愛子(ケンジタキギャラリー)など、ロンドンではまず見れない日本の優秀な若手の作品を見れたのは幸運なこと。また、ロンドン時代の知人にも同好会のようにたくさん合えた。

中でも嬉しかったのが、キャンバウェルカレッジに在籍しながらfoglessを手伝ってくれた多和田有希ちゃんが、Taro Nasu Galleryのギャラリーアーティストになっていたこと(今は芸大博士課程に在籍中)。行楽地や競馬場などで撮った写真の表面を消しゴムで削って、群集が光の波に呑まれているかのような視覚効果を出したユニークな作品だった。

 
Taro Nasu Galleryでばったり会った多和田有希ちゃん。後ろは彼女の作品。

また、水戸芸術館にキュレーターとして就職した竹久侑さんにも再会し、foglessで2月にインタビューを掲載したマーコ・ボアが水戸芸で展示することになったと嬉しい知らせを聞く。さらに、昔、取材した美術家の青山悟さん、森美術館に入った国枝かつらさんにもばったり会う。その他、水戸芸の名物キュレーターの森司氏、『ARTiT』の小崎哲哉編集長、同誌編集の柳下さん、美術ライターの藤原えりみさんなど、日頃から誌面で名前を見かけていた方々に会う。

アートフェア東京のオープニングが引けた後は、新丸ビル7階にて開催されていたアートイベント「ニュートーキョーコンテンポラリーズ」の会場にお邪魔し、宇治野宗輝&ザ・ローテーターズのごきげんなライブパフォーマンスを見る。あとで知ったが、無人島プロダクションARATANIURANOなど、このイベントの参加ギャラリー7軒は、経営者の年齢が30代前半から中盤と比較的に若く、小山登美夫ギャラリーやスカイ・ザ・バスハウスら東京を代表するギャラリーで修行を積んだ後に独立した、いわゆる第二世代のギャラリーになるとか。第一世代とてまだ10年数年足らずなのに早くも分家筋がこんなにあるとは、東京のアート業界がいかに猛スピードで成長しているかが窺われる。(トコ)

アートフェア東京2008
Taro Nasu Gallery
ニュートーキョーコンテンポラリーズ

作家のサイト(ギャラリーHP):
青木克世
手塚愛子
多和田有希
宇治野宗輝&ザ・ローテーターズ

   

4月2日

東京おのぼり日誌1:銀座でスタンリー・ドンウッド

 
 

日本入り早々、レディオヘッドのアートワークでお馴染みのスタンリー・ドンウッドの個展「I Love the Modern World」のオープニングにお邪魔。展示会場はこの道50年、ここ数年は中国進出で注目を集める銀座の老舗、東京画廊+BTAP

 
スタンリー・ドンウッドの個展「I Love the Modern World」のパンフレットから。

スタンリーには前にも取材したことがあったが、今年1月に「念願の日本で個展を開くことになった」と噂を聞きつけ、これは何とかして記事にしたいと思い、本人と『スタジオボイス』編集長の品川氏にコンタクト。2月にロンドンにて取材。これまでご法度だった顔写真を撮らせてもらったうえに、記事用に特別にアートワークまでも作ってもらい、スタンリーの全面協力のもと、現在発売中の5月号(特集は『グラビア写真の魔力!!』)に5ページのインタビュー記事が掲載された。

時差ぼけの頭で駆けつけた会場には、ファンらしき若者がうじゃうじゃ。それに紛れてテレビやラジオ局の取材陣がパーティーの様子を収録しているなど、さすがレディオヘッドの第六番目のメンバーと感心する。品川さんをはじめ、元『スタジオボイス』編集部の富田秋子さん、『ART iT』副編集長の内田さん、フリーライターの松下幸子さんなど、雑誌関係者もたくさん来場し、スタンリーも顔がほころんだまま。その後、松下さんと一緒に二次会会場のカレッタ汐留47階に向かい、一年半振りに東京の夜景を眺めながらご馳走にありつく。アートフェアのパーティーも兼ねていたようで、フェアから流れてきた華やかな男女で会場はごった返し状態。日本到着翌日にして早くも、東京のアートシーンのただならぬ活気を肌で感じた。(トコ)

東京画廊+BTAP
スタンリー・ドンウッド

   

3月13日

展覧会レビュー掲載

 
  ドイツ・ボーズ写真賞@ザ・フォトグラファーズ・ギャラリー
トーマス・シャイビッツ@カムデン・アーツ・センター

   

3月13日

展覧会レビュー掲載

 
  『ARTiT』ウェブ版に、ロンドン在住の若手作家さわひらき君に取材したロング・インタビューが掲載中です。ペーパー版第18号にも載ってますのでヨロシク!(トコ)

   

3月6日

マーコ・ボア インタビュー掲載

 
 

久々にfogless用にインタビューをとりました。お相手は1月にマメリー+シュネールで個展が開かれた写真家のマーコ・ボア(Marco Bohr)。新進気鋭の若手を集めた企画として評判になった、ローザンヌ・エリゼ美術館企画の「reGeneration: 50 photographers of tomorrow」展に選ばれるなど、いま波に乗っている若手のひとり。会ってみたらなんと大の日本好きで、日本の現代写真について博士論文を書いているという入れ込みよう。野口理佳やら余白の概念やら、とても面白い話が聞けました。

今回この記事の撮影をアーティストの斉藤幹男くんにお手伝いいただきました。幹男君はドイツの名門、シュテーデル・フランクフルト市立美術大学で5年間、写真と映像を学び、去年の暮れにロンドンに越してきたばかりの国際派の若手作家。その磨かれた腕とセンスでマーコを素敵に撮ってくれました。また、ユニバーシティー・カレッジ・ロンドン(UCL)に交換留学中の学生さん須賀藍子ちゃんもヘルプしてくれました。感謝です!(トコ)

   

2月28日

263億円相当のアートが御国のものに!

 
  アンディ・ウォーホル、デミアン・ハーストら、トップアーティストによる時価263億円(1250万ボンド)相当分の現代美術品を、国が約59億円(265万ポンド)で購入。 無料での寄贈ではないが約8割引きという破格セール。

かつて英国のディーラー王と呼ばれたアンソニー・ドフェイ(Anthony d'Offay)氏所蔵の美術品725点が国のものとなり、テート・ギャラリースコットランド国立美術館が共同でその管理を行うことになる。

2001年までロンドン中心部デリング・ストリートに画廊を構えていたドフェイ氏が約30年にわたり蒐集し、今回破格で譲渡された作品は、戦後最も重要とされる近現代の巨匠32名の作品。

「アート・ルーム」というコンセプトのもと、作家ごとに展示室が設けられ、2009年春/夏期から両美術館にて展示が始まる予定。また、同美術館の依頼により最初の5年間をドフェイ氏が無償でキュレータを務める。

ドフェイ氏に払われた作品の購入費用の出所は、英国とスコットランド政府がそれぞれ21.1億円(100万ポンド)ずつを負担。国民文化財記念基金(NationalHeritage Memorial Fund)と芸術基金(The Art Fund)からもそれぞれ14.7億円(70万ポンド)と2.1億円(10万ポンド)を援助している。

32名の顔ぶれは以下の通り(一部)。ダイアン・アーバス、ヨーゼフ・ボイス、イアン・ハミルトン・フィンレイ、ギルバート&ジョージ、デミアン・ハースト、ジェニー・ホルツァー、アンゼルム・キーファー、ジェフ・クーンズ、ソル・ルウィット、リチャード・ロング、ロン・ミュエク、ブルース・ナウマン、ゲルハルト・リヒター、エド・ルシェ、ビル・ヴィオラ、アンディ・ウォーホル、ローレンス・ウェイナーなど。 詳しくはこちらで。(トコ)

   

2月28日

チャップマンがサーチからテートにお引越し?

 
  2004年のサーチ・ギャラリーでのジェイク&ディノス・チャップマン展の話題作、アフリカの木彫り彫刻とマクドナルドのロゴをユーモラスに融合したインスタレーション「チャップマン・ファミリー・コレクション」をテートが購入した。

購入額はまだ公表されてないが、業界紙『アート・ニュースペーパー』の報道によると、テート過去最高金額の取引のひとつになるとのこと。ちなみに作家のスタジオを訪れて直接買ったといわれるチャールズ・サーチの当時の購入金額は約2億1千万円(10万ポンド)。

今回の交渉役を務めたのは作家の契約ギャラリーであるホワイト・キューブ。テートがサーチ側から直接買い受けたのか、それともホワイト・キューブが一旦買い取りそれをテートが再購入したのか、そこら辺のことは明らかにされていない。

ここ数年、デミアン・ハーストの「鮫」をはじめヤング・ブリティッシュ・アーティストの作品を派手に手放しているサーチ・コレクション。「鮫」のようにアメリカに行かずして、テートに留まることになったのは嬉しいことだが、なんとなく時代の動きを感じる。

ちなみに、そのサーチ・コレクションでは、この春の新ギャラリー館開館に向けて準備が着々と進行中。残念ながら開館日はまだ発表されていないが、オークションハウスのフィリップス(Phillips de Pury & Company)と手を組み、テートに対抗して入場料を無料にすることを発表している。 詳しくはこちらで。(トコ)

   

2月3日

話題のコンペ2つ:丸コゲの車から南の天使まで

 
 

■ 第四の台座、新レース?
トーマス・シュッテのガラスの板が現在飾られているトラファルガー広場の「第四の台座」の次の展示に向け、早くもコンペが開催。
アニッシュ・カプーアトレイシー・エミンなど、候補作家6名の作品案を紹介する展示がナショナル・ギャラリーで開催中だ。そのなかから気になった作品を2点ばかりご紹介したい。

 
Jeremy Deller,
The
Spoils of War (Memorial For An Unknown Civilian)
第四の台座プロジェクト作品案。

まずは、観光客のみならず広場の鳩もびっくり。2004年のターナー賞受賞作家ジェレミー・デラー(Jeremy Deller)による丸コゲの車。こちらの作品は、単にそこら辺の事故車ではなくて、武装勢力による抗争が未だにつづくイラクの産物。イギリスも加勢したイラク戦争の果てにボロボロにされた一般人の車を台座に据えようというもの。

ロンドンにいると、この国をイラク戦争へと導いたブレア元首相への批判を今でもしょっちゅう耳にするが、この模型を見ていると、トラファルガーの海戦勝利を祝ってつくられた広場をイラク戦争の反省の場に、さらには戦争という行為を考える場にしようという作家の想いが伝わってくる。反戦メモリアルの印象が強すぎるのでこれが選ばれる確立は低そうだが、なんとも大胆でストレートな作品。

気になるもうひとつの作品が、アントニー・ゴームリー(Antony Gormley)の網で周囲をおおった空の台座になる。ゲイツヘッドに立つ「エンジェル・オブ・ザ・ノース(Angel of the North)」をはじめ、巨大物の制作を得意とするゴームリーがここまでミニマルな戦略に出るとは意外だが、台座に彫刻を置く代わりに人に立ってもらおうというのが彼のアイデア。

 
Antony Gormley
One and Other
第四の台座プロジェクト作品案。

ひとりあたりの持ち時間は一時間。これを24時間体制で一年間行った場合、なんと8,760人が台座に立って、しばしアートになる気分を味わえるという。空っぽの台座は少々寂しい気もするが、安全のために張られた網が台座のフォルムと絶妙に合っていて美しいし、冴えない作品を置くくらいなら返って安上がりで良いかもしれない。 それに何よりも、パブリック(大衆)がアートになるというコンセプト自体が、街を代表するパブリックアート・プロジェクトであるこの企画に合っているような気がする。詳しくはこちらで。

■ エンジェル・オブ・ザ・サウス?
こちらはロンドンの少し下、イングランド南東部にあるケント州の村おこしコンペの話で、英国最大となるパブリックアート制作の候補者に、今回のターナー賞受賞者であるマーク・ウォリンジャーをはじめとする美術家5名の名前が発表された。

この国最大のパブリックアートと言えば、上でも触れたゴームリーの「エンジェル・オブ・ザ・ノース」がまず浮かぶが、2ミリオンポンドが投入されるこちらの‘サウス’の企画はその約二倍。トラファルガー広場のネルソン提督碑に匹敵する高さ50メートル級の作品が設置される予定。

設置される場所は、ヨーロッパ最大のインドア・ショッピングセンター「ブルーウォーター」で有名なケント州のエブスフリート・バレー(Ebbsfleet Valley)。昨年11月にヨーロスターの始発駅であるエブスフリート国際駅が開通したばかりということもあり、パリやブリュッセルから英国入りする人々に向けて国のイメージを演出する新たなランドマークになるということのよう。

エブスフリート・ランドマークの制作候補者は、先のウォリンジャーの他、レイチェル・ホワイトリードリチャード・ディーコンクリストファー・ルブランダニエル・ビュランの5名。上から3名はターナー賞受賞者、さらにそのうちの2名は「第四の台座」プロジェクトの経験者。最後のビュランのみフランス人になる。詳しくはこちらで。(以上、トコ)


   

1月31日

ギャラリー散策:ウェストエンド

 
 

■ Marc Quinn@White Cube
Mason's Yard

トラファルガー広場の「腕のない妊婦像」で一躍国民的ヒーローになったマーク・クインの個展がスタート。胎児成長のプロセスを9段階に分けて彫刻に表した新作「Evolution」などを発表(地下)。この作品では、タツノオトシゴみたいに背を丸めた胎児が、今この瞬間、ここで誕生する、といわんばかりに、大理石の塊から浮かび上がる形で彫られている。肥大化した胎児はシュールでどこか滑稽でさえあるが、いまどき珍しいまでの正統派な彫刻に、「像を閉じ込めている大理石の中から、その像を解放するために彫り起こす」と言ったといわれるミケランジェロの言葉を思い出す。2月23日まで。

 
Marc Quinn
Evolution (detail), 2008
White Cube
Mason's Yard
9点で構成された彫刻のなかの一点。胎児上部のクローズアップ。


■ Roman Signer @ Hauser & Wirth
飲んで、しゃべって、あやうく作品を見逃すところだったローマン・シグナーの個展。オープニング会場はいつもどおり人でごった返していたのだが、作品らしきものが見当たらない。「まさか、作品が間に合わなかったの〜?」などと思いながら足元をみると、"ラジコンカー"が私のつま先をつんつんしている。何だかわからないが、どいても人懐こい犬のように寄ってくる。隣にいたスーツを着た"飼い主"に聞いてみると、車体に音探知センサが入っていて、音のするほうに動くのだという。

 
Roman Signer
Stuhle (Chair), 2007
Hauser & Wirth
今回のローマン・シグナー展の主役はこの可愛い「芝刈り機」くん。

今回のハウザー&ワースの展示は、芝刈り機を改造したこの小さな車が主役で、他にあるのは障害物として置かれた椅子のみ(オープニングの晩は人が多くてそんなにあったとは気がつかなかったが、全部で15脚もあるらしい)。こんな高級ギャラリーの個展会場で、絵を飾ることも、巨大スクリーンを置くこともなく、ラジコンカーのような車を一台走らせるだけとはなんとも粋なことだが、これを還元主義的な美学とみるか、ウィットに飛んだユーモアとみるか、単にアホな行為とみるかは人による。ちなみにここは「電気が点いたり消えたりする部屋」で有名なマーティン・クリードのギャラリーでもある。なんとなく接点が見えるような。地下と二階にも別作品が展示されている。3月15日まで。


■ Rachel Howard @ Haunch of Venison
日常の不幸の中から生まれる美の概念を探究するレイチェル・ホワードの絵画展。デミアン・ハーストのアシスタントとしてスタートを切ったホワードの作品といえば、家庭用グロスペイントを使って描いた、絵の具がキャンバスを流れるような抽象画。今回も最上階のメイン展示室にはその手の作品が並ぶが、新しい展開として、死、自殺をテーマとした具象画が加わった。黒で亡霊のように描かれた人間は新聞やインターネット上で見つけたイメージが基になっているという。表面は相変わらずてかてかだが、配色とモチーフがどことなくマルレーネ・デュマス風。2月23日まで。


■ Pavel Buchler @ Max
Wigram

チェコ生まれ英国在住の作家、ダグラス・ゴードンをはじめ今活躍する多くの作家に影響を与えた教師としても知られるパヴェル・ビュッヒラーの展示。

70年代のミニマリズム、コンセプチュアルアートの洗礼を受け、「making nothing happen(何も起こさないこと)」をモットーに活動してきた作家らしく、 「SOLD OUT」と題された今回の展示は、休業中の商店のように静か。古ぼけたテープレコーダーの上に飲みかけのジャック・ダニエルスのボトル、寂しげにおかれたマイクスタンド、フレームされただけの白い紙と、どれもこれも無味乾燥で今にも消え入りそうな感じ。

だが聞くところによると、白い紙の裏にはヨゼフ・ボイスのオリジナルワークが隠されていて、マイクからはルー・リードの「Hello」というかすかな声が聞こえる仕組みになっているそうで、そんなことを聞くと一瞬心が弾まなくもないが、その後で「で?」と聞き返したくなってしまう。2月23日まで。

 
Pavel Buchler
SOLD OUT展から,
You Don't Love Me
Max Wigram Gallery


■ Marco Bohr @ Mummery + Schnelle

ロンドンにしては珍しく清々しい写真だと思えば日本を撮ったもの。それも昔日本にいた頃、何度も通った多摩川べり。そんな個人的な思い出もあって、マメリー+シュネールで展示中のマーコ・ボーアの写真は、ただぼーっと見ているだけで癒されてしまうのだが、見ているうちになんとなく不思議な気持ちになってくる。人がみなトランペットやらサックスやら楽器を演奏していて、それはそれでごく自然な感じなのだが、でも多摩川ってこんなにミュージシャンに人気だったっけ?と疑問がちらりと浮かんでくる。どこまでが現実でどこからが作り物なのか、なかなか見分けのつかないところが面白い。それと日本の空気をよくつかんでいるところも魅力的。作品はこちらで。2月23日まで。


■ Andrey Bartenev @ Riflemaker
ギャラリーの19世紀のショップフロントがディスコ会場へと変貌?去年のヴェネツイア・ビエンナーレ、ロシア館で見せた作品の姉妹品、Disconnectionをもじって《Disco-Nexion》と書かれたカラフルなネオンが、たくさんのハートマークと一緒にミラーボールのように回転。

 
Andrey Bartenev
Connection Lost, 2007
去年のヴェネツイア・ビエンナーレで展示されたオップな作品

平均気温マイナス10度のシベリア生まれというこちらの作家アンドレイ・バーテネヴは、テリー・リチャードソンばりの灰汁の強い作家なようで、地下の展示室にはゲイ・ソフトポルノ系ハプニングと見間違ごうばかりの自らのパフォーマンスショットをたくさん公開。残念ながら見逃してしまったが、オープニングの晩にはピンクやゴールドのキャットスーツを着たサイバー風のモデルがうろうろする中、バーテネヴが口をシリコンでふさいだ不気味な姿で登場し、聾唖者のコミュニケーションを真似たような一風変わったパフォーマンスを行った模様。ナタリア・ボディアノヴァとかロシアのスーパーモデルも来たという噂。ライフルメーカーはやっぱりやることが派手だなあ…。3月11日まで。


■ Craigie Horsfield @ Frith Street
写真を中心に活動をするイギリスのベテラン作家、クレイギー・ホースフィールドの写真展。会場にはモノクロとカラーを取り混ぜて、縦横5メートル級の大作が並ぶが、ユニークなのはそれらがみな「タペストリー」であること。つまり、撮った写真を紙に焼くのではなく、カーペットに織り込んでいる。実際の制作はベルギーの織物職人が行ったというが、聞くところによると、その作業も今ではかなり電脳化されているようで、コンピューターでデータをフィードし、実際の作業は機械のなせる業。その写実性もさることながら、どっしりとした存在感とディテールの細かさとの対比が見事。何十分も見入ってしまいました。2月29日まで。
(以上、トコ)

 
Cragie Horsfield
Calle, Preciados, Madrid, January 2007
Frith Street Gallery

 

   

1月16日

London Art Fair 2008

 
 

今年で20周年を迎えるロンドンで最も古いアートフェアのひとつ、ロンドン・アートフェア(London Art Fair)がイズリントンのビジネス・デザイン・センター(Business Design Centre)で始まった。

 

ここ数年フリーズやズーなどの新しい国際アートフェアが目立つなか、古株であるこのロンドン・アートフェアの特徴は、国内のギャラリーに焦点を置いたローカルな画廊群と、モダン/コンテンポラリーをあわせた広範囲な時代区分、そして比較的に手の届きやすい値段。ピカソからバンクシーまでが、「メイン会場」「アート・プロジェクツ」「フォト50」の三部構成をとる会場に並ぶ。

出展ギャラリーの大部分が一階、メザニン、二階の「メイン会場」に集中。彼らの得意どころは、コンセプチュアルアートやYBAが出てくる前のモダンブリティッシュ・アート。ブリジッド・ライリーデイヴィッド・ホックニーベン・ニコルソンパトリック・ヘロンなどの大御所から無名の作家まで、具象、抽象を問わず絵画の存在が目立つ。

一方、これと対比をなすのが4年前からスタートしたコンテンポラリー・アートに焦点を置いた二階奥の「アート・プロジェクツ」のコーナー。ここにはオランダやフランスなど海外の画廊が多数参加しているほか、作家一人あるいは少人数に絞った企画展展示形式がとられており、インスタレーションなどの大型の作品も多く、「メイン会場」とは一味違う展示を楽しめる。

 
Tony Heywood
My Family as Amoeba, 2007
The Fine Art Society, London, Stand 12

また、今年見逃せないのが、同じく二階奥の「フォト50」のコーナーで、写真のもつ物語性に焦点をおき、ニック・ワップリントン(Nick Waplington)やコリン・デイ(Corin Day)などコンテンポラリー・フォトグラファー10名を集めた企画展示が催されている。このアートフェアが写真にフォーカスを置くのは20年の歴史で今回が初めてのこと。

それにあやかってのことか、今年は例年に比べ写真の存在も目立つ。「Art Projects」ではパリのGalerie Oliver Waltman、ロンドンのThe Fine Art Society、アムステルダムのWitzenhausen Galleryなどがそれぞれ写真を展示。また、「メイン会場」では、キャリア50年の写真家ジョン・ヘッジコー(John Hedgeco)の特別展示を行っているRobert Sandelson Galleryをはじめ、Ben Brown Fine ArtsPurdy Hicks GalleryMichael Hoppen Galleryなどが写真に力をいれている。

 
Hendrik Kerstens
Paula,
Witzenhausen Gallery


しかし今回のハイライトと言えば、いつ弾けてもおかしくないと囁かれるアート・バブルに押されたオークション。ブルームズベリー・オークションギルバート&ジョージ(Gilbert & George)の70年代の絵葉書を使った作品14点を、AIDS基金のテレンス・ヒギンズ・トラストヴォルフガング・ティルマンス(Wolfgang Tillmans)、トレイシー・エミン(Tracey Emin)、ジュリアン・オピー(Julian Opie)など作家23名の作品をオークションに掛けるイベントが期間中に催される。1月20日まで。詳しくはLondon Art Fair 2008のサイトで。

London Art Fairに関する過去記事
2002年のレポート

   

1月15日

2008年のご挨拶

 
 

明けましておめでとうございます。 新年のご挨拶が大幅に遅れましたが、みなさま、今年もどうぞよろしくお願いします。

   

1月15日

バンクシー ネットオークションで4千4百万円!

 
 

塀に描いたバンクシー(Banksy)のグラフィティに 4千4百万円(£208,100)の値がつくという異例な事態が発生!

競売にかけられた「絵画」は、骨董品市で有名なポートベロー・ロードにある某メディア制作会社の壁に描かれたもので、経営者のLuti Fagbenle氏によってネットオークションのeBayにて売却。

壁という特異な「メディア」に描かれた「絵画」ゆえに、落札者は壁ともども作品を手に入れるというユニークな形をとる。しかも、壁の取り外しと修復にかかる工事費(約100万円程度)は上の落札金額には含まれず、その費用は別持ちになるとか。

英国では「ゲリラ・アーティスト」という異名で親しまれているバンクシー。地元ブリストルで80年代後半からストリート・アーティストとして活動し、2000年頃からロンドン市内方々の壁にステンシルを使ったグラフィティを描きはじめ、反骨精神をユーモアで包んだ痛快な作風が若者の間で圧倒的な人気に。

数年前からこれらグラフィティに加え、ニューヨークのMoMAや大英博物館などの世界の有名美術館に失業者風の格好をして忍び込み、無断で自作を壁に飾るというゲリラ展示戦法を展開。その大胆な発想とあっぱれな行動力に、姿を明かさないという神秘な一面が加わり、現代のアルセーヌ・ルパンのごとく一躍メディアの寵児に。

しかし、反体制のシンボルだったのがここ1年で突然、オークションハウスとハリウッドのお気に入りに格上げ。スプレーペイント画など11点が競売にかけられた去年秋のボンナムスのオークションでは、予想金額を二倍近くも上回る総額一億円以上(£546,000)の売り上げを達成。また、同時期にロンドンのLazarides Galleryによって開かれたオークション「The Shadow Lounge」では、ブラッド・ピットとアンジェリーナ・ジョリーのカップルが2億1千万円(£1,000,000)でバンクシー作を競り落としたとも報道されている。(トコ)

詳しくはBBCのサイト

foglessのバンクシーに関する過去記事(すべて日誌)
2006年5月16日:メイドっ娘、チョーク・ファームに出現!
2005年10月27日100 Westbourne Grove(ねずみ)
2005年5月27日:大英博物館からお墨付き?
2005年3月26日:マンハッタン上陸作戦
2003年11月5日:バンクシー四時間の快挙
2003年9月26日:人気急上昇の牛に羊


   
   
 
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