Vilma Gold(ビルマ・ゴールド)で見たMark Titchner(マーク・ティッチナー)の作品には「Dreamachine」の要素があちこちに見え隠れし、どことなくヒッピー時代の面影を感じる。入り口近くに置かれた「Primogenigator」(2000) が中でも一番それっぽく、シリンダーならぬ隕石を模った彫刻の中には電球が置かれ、表面の穴を通して光が放射している。更にこの隕石はパイプを通じ下方に置かれたレコードプレーヤに繋がっていて、レコード盤の回転とともに回転する仕組みになっている。壁に光の水玉模様が走り、これが結構綺麗で見てると楽しかったが、後で「Dreamachine」が目を閉じて見るものだったことを思い出しポイントをミスしてしまったように感じる。
次の作品「Something Plastic to Fight the Invisible」 (2001)からは「Dreamachine」というよりは幻覚症状そのものというイメージが伝わってくる。インスタレーションの中央にはグラデーションカラーのリボンを大きな台に雑に絡めた作品が置かれ、その周りには惑星を取囲む衛星のように「ランプ」が何体か置かれている。サイケ調のこの「ランプ」は、上の部分が原色の糸を放射線状に編んだ「鍋敷き」のような物で飾られ、その中央には青い電球がそれぞれ付いている。D級SF映画っぽいこの世界に暫く立っていると、煌々とした光とうねる色に目が回りそうになる。
更にインスタレーションを取囲む壁二面には、「Nothing」「Something」という二文字が看板のような大きさでペイントされている(What is this thing that stands before me?, 2001)。再びグラデーションを用いパイプ風にデザインされた文字は、まるでPhotoshopで特殊効果を施した文字のように見える。
サイケデリックなイメージに溢れるTitchnerの作品は、面白いものの理解に苦しむ。「Dreamachine」に対するノスタルジアなのか、皮肉なのか。この脳天気な程の明るさの背後に、社会的なメッセージが隠されているのか、いないのか。プレスリリースには作品の説明は一切無く代わりに哲学的な調子の文章が箇条書きで書かれている。と、その6番目にこんな文章を見つけた。
If the Dreamachine is a non-habit forming, spinning dream
box that is capable of inducing a drugless high, why is it not available in
your local department store? From now on, it's all free, it's all safe, it's
legal and it really works.
(もしドリームマシンが麻薬無しにハイな状態を引き起こせる非常習性の回転する夢の箱ならば、どうして近くのデパートで売っていないんだろう? タダで安全で合法で本当に効くものなんだ。)
健全な方法でハイになって帰ってください、と言うことなのだろうか。イギリスの都会では、幅広い年齢層の間で一般化しつつある麻薬。閣僚レベルで大麻の合法化が議論されているこの時代、今回の展示会はTitchner案として受け止めてしまって良いのだろうか。
伊東豊子(Toyoko Ito)、2001年1月22日
Mark Titchner
"Love, Work & Knowledge"
010113-010211
Vilma Gold
66 Rivington Street
London EC2A 3AY
0207 613 1609
www.vilmagold.com
地下鉄:Old Street (Northern Line Bank Branch)
木―日:1200-1800



写真上:
Vilma Goldでの「Mark Titchner」展の展示風景
手前から
Primogenigator, 2000
Consciousness is Artificial Daylight
(部分), 2001
Photo:
© Kuma, 2001,
写真左:
Vilma Goldでの「Mark Titchner」展の展示風景
手前から:
Something Plastic to Fight the Invisible, 2001
What is this thing that stands before me? (部分), 2001
Photo:
© Kuma, 2001,