
Shoreditch Town Hall の正面玄関を入るとすぐ右手にPeerというアーティスト支援団体の事務所がある。簡素な事務所の奥にはベッドルームくらいの小さな展示スペースがあり、Ceal Floyerの新作「Massive Reduction」はここに展示されていた。
電話応対中のスタッフに軽く会釈して展示室に入ってみると、中はもぬけの殻で作品らしきものは一切見当たらない。間違ったところに来てしまったのではと思いながら暫くその場にいると、右側の壁に黄色いラインが一本床から天井まで引かれていることに気づく。近寄ってみると、価格ラベルを何百と貼って引いたラインであることがわかる。と突然、何ヶ月か前にCamden Arts Centreで見たMartin Creedの壁にブルータックを貼った作品が頭をよぎり、彼女の場合はラベルかあ〜と納得する。

Ceal Floyer, Massive Reduction,
2001 (part/部分), photo: Toko
©
ビジュアルが要であるアートの世界で、Floyerはまるでそれに挑むような作品を制作している。まるで鑑賞者が気づかないまま行ってしまうことを期待しているかのように、作品は極めて日常的で存在感が薄い。今回の作品はもちろんのことながら、壁に一枚のレシート貼っただけの「Monochrome Till Receipt (White)」(2001)や部屋の片隅に黒いポリ袋を置いただけの「Garbage bag」(1996)はまさにその良い例で、そこがギャラリーでなければまず意識に入らないようなものだ。
面白いことに、Floyerの場合、存在の無いことによって存在感が生じている。ギャラリーには絵や彫刻が飾られていて当然、またこれらの美術品は視覚的表現力が強くて当然という鑑賞者の期待を裏切ることによって、逆に彼らの関心を作品へ向けてしまっているのだ。つまり、そこに有るべきものを探し出そうとする私達の頭の動きを逆手に取っている訳だ。このアプローチ、ビジュアルが飽和状態まで達した現代には効果的なようで、素材の謙虚さに似合わない強い印象を鑑賞者の心に残すようだ。
© 伊東豊子(Toyoko Ito), 2001年4月
Ceal Floyer, "Massive Reduction"
010404-010429
Peer
Shoreditch Town Hall
380 Old Street
London EC1V 9LT
020 7739 8080
www.peeruk.org
(現在制作中)
地下鉄:Old Street (Northern Line)
水―金1200-1800
日曜 1200-1800