

今年のターナー賞は、Richard Billingham(リチャード・ビリンガム), Martin Creed(マーティン・クリード), Mike Nelson(マイク・ネルソン), Issac Julian(アイザック・ジュリアン)の四人が候補に上がっている。
Richard Billinghamはビデオ作品2点と写真数点を出品している。ビデオ 「Ray in Bed 」 は、彼の定番ともいえる父親Rayを自宅で撮ったものだ。クローズアップを用い、ベッドに横たわるRayの全体像が、しわがれた肌、体毛と毛穴、点と線からなる抽象的な映像へと徐々にズームしていく。マイクロ的な映像は、煙を吐く口の動きをリバースで再生した「Tony Smoking Backwards」でも展開され、口だけを切取った映像のシュールさと逆方向の流れに、これもまた次第に抽象色が強まっていく。この他には、Constable(カンスタブル)の油彩を思わせるような山岳風景を撮った写真などが出展されている。

Richard Billingham,
Tony Smoking Backwards,, 1998
Courtesy of the artist and Anthony Reynolds
Gallery, London
Martin Creedはインスタレーション「Work
#227: The Lights going on and off」を発表している。展示室の天井のライトを用いたもので、5秒間隔で電灯が点いたり消えたりするように操作されている。これ以外には作品はなく、白壁の展示室は空き部屋のようにもぬけの殻となっている。実際、訪問者の中には、次の部屋への通路か何かのようにここを通り過ぎていく人が見られる。作品が有ることを期待する観客に、無を示すことによって有を感じ取らせる意表を突いた作品と言えそうだ。
Mike Nelsonもインスタレーションで、「The Cosmic Legend of the Uroboros Serpent」というスケールと意外性の高い作品を発表している。これは、展示室の裏手にある美術館の収納庫を使ったもので、Nelsonの手によって美術品の安息の場が材木やケーブルが並ぶ工事現場用倉庫へと様変わりしている。この収納庫へは、展示室を一旦出て、薄暗くのびる廊下を進み、小部屋を通り抜けて行くわけだが、偶然にせよ意図的にせよ、このお化け屋敷的な行程がとても効果的なムードメーカーとなっている。
作家、映画監督、時には俳優としても活躍するIssac Julianは、誌的で神秘的なフィルム「Vagabondia」「The Long Road to Mazatlán」の二作を出品している。いずれもギャラリーでの上映用に製作した"アート"フィルムで、複数のスクリーンを用いるマルチ・プロジェクション・フィルムとなっている。「Vagabondia」は、ロンドンのSir John Soane's Museumで撮影されたもので、ミラーリングされて流れる映像を通して、西洋美術の至宝に埋もれる迷宮が万華鏡のように鮮やかで分裂した世界となって展開されている。西部劇映画のパロディーのような「The Long Road to Mazatlan」では、3台のスクリーンを用いてストーリーを複数のアングルから同時にとらえることによって物語に多元性を持たせている。
気になる賞のゆくえは、また後日。
伊東豊子(Toyoko Ito)、2001年12月
Turner Prize 2001
Tate Britain
011107-020120
Tate
Britain
Millbank
London SW1P 4RG
020 7887 8008
www.tate.orge.uk
地下鉄:Pimlico
(Victoria Line)
月−日:1000-1750