
上) Work#227: The lights going on and off, 2000 (On)
下) Work#227: The lights going on and off, 2000 (Off)
Installation at Tate Britain
Copyright the Artist
Courtesy Cabinet, London and Tate Britain
Photo: Tate Photography©
Martin Creed(マーティン・クリード) が今年のターナー賞を掻っ攫った。大穴ともいえなくないこの展開に、ターナー賞がまた衝撃を巻き起こしてくれたと一騒ぎありそうだ。
Creed が今回ターナー賞のために用意したものは、「Work #227: The Lights going on and off」というインスタレーションだ。題をそのまま表現したもので、5秒間隔で点いたり消えたりする電気が作品だ。とはいっても、展示室の天井のライトを操作しただけなので、電気スタンドのような一見して作品とわかるような代物は部屋には何も置かれてないない。とにかく、壁も床もまっさらで、空き部屋としか見えないのだ。
Creedは以前に、テート美術館の正面玄関を 「the whole world + the work = the whole world」と綴られたネオンで飾ったことがある。アーティストから発されるものとしては、かなり悲観的な響きをもつ公式だが、まるでこの公式を証明するのが目的であるかのように、彼の作品はゼロに近く感じられる。
今回の作品も含めて、大概どの作品も、一見してそれとわかるものはない。今年の一月に、Camden Arts Centreで展示された1センチ四方のブルータックを壁にはったものや、自動開閉するドアなど、壁に目を貼り付けるようにして、または、頭のスイッチを切り替えて疑ってみることによって初めて作品だと気付くものがほとんどだ。この夏に横浜のポートサイドギャラリーで展示された風船のインスタレーションにしても、こちらは視覚的には目立つにもかかわらずあまりにも意外な発想のために、窓越しに風船の山を見ても展覧会とは思えず見過ごしてしまいそうになるところがある。
この「無」に近い作品が今回ターナー賞に選ばれたことは、今回Creedに対してバッシング攻勢を取ったマスコミと美術評論家にとって少なからず驚きに値するだろう。賞争いから抜けただの、みすみすチャンスを無駄にしているなどと、作品が公開されてから厳しい言葉が飛び交った。かくいう私も、彼の己の理念に忠実なところには深く感銘しても、視覚的表現力を競う賞争いには向かないのではないかと内心思ったりした。しかし、ターナー賞の審査員達の目は思っていた以上に鋭かったようだ。無の中に隠された存在を見落とすことがなかったのだから。
伊東豊子(Toyoko Ito), 2001年12月
ターナー賞の他の候補者については、こちら
Martin Creedの他の作品については、こちら
Turner Prize 2001
Tate Britain
011107-020120
Tate Britain
Millbank
London SW1P 4RG
020 7887 8008
www.tate.orge.uk
地下鉄:Pimlico (Victoria Line)
月−日:1000-1750