Lucian Freud
ルシアン・フロイド

エリザベス二世の剥くんだ顔が、今日の全国紙四紙のフロントページを飾っている。ぐるぐるに塗りたくられた白粉のなかから険しい目がのぞいている顔は、Lucian
Freud(ルシアン・フロイド)が昨日陛下に捧げた肖像画で、これが大きな話題を呼んでいる。
ローマ法王から頼まれても首を縦に振らなかった大御所の油彩は、A4サイズにも満たない小品だ。作品は、荒々しい筆づかいと抑えた配色、厳しい老人の表情に特徴づけられ、人間としての年輪と君主としての威厳がみなぎっている。しかし、皇室の肖像画につきものの優雅さ、華やかさを感じさせる滑らかさはみられず、逆に贅肉が震えるような生々しさが全体を覆うフロイドらしい仕上がりとなっている。
美術評論家の反応は賛否両論だ。美術評論家William Feaverは「ゴヤ以来の最高のロイヤルポートレート」(The Times)と語り、The Guardianの美術記者Adrian Searleも同じく過去150来の傑作肖像画とコメントしている。その一方で、British Art JournalのエディターRobin Simonのように、絵のサイズと極太の筆さばきのミスマッチを指摘し「技術的な失敗作」(The Sun)と酷評している評論家もいる。
6年間の交渉と20ヶ月の製作をへて献上された肖像画の一般公開は、バッキンガムパレスに隣接するQueen's Gallery(クイーンズ・ギャラリー)で5月22日から行われる。現在は拡張工事のために閉館してる同ギャラリーのオープニングを飾る目玉になりそうだ。
ルシアン・フロイド
1922年にベルリンの比較的裕福なユダヤ人家庭に生まれる。ナチス政権の台頭のなか1931年にロンドンに移り、それ以来英国に住む。60年代以降多数のヌード画や肖像画を発表し、Frank
Auerback(フランク・アワバック)、Leon Kossoff(レオン・コソフ)らと共に「スクール・オブ・ロンドン」の画家として広く知られ現在に至る。祖父は精神分析学者ジークムント・フロイド。
伊東豊子(Toyoko Ito), 2001年12月