「このもうひとつの強靭な種族の目を通して、私たちは、私たちの夢と悪夢が築いてきた真の現実を学べるかもしれない」と語っているオノ。その言葉通りに、ここには彼女がもっとも残酷な世紀と呼ぶ二十世紀の歴史から、9.11テロ後なおもエスカレートする民族や宗教間の対立、日常茶飯事と化した若者間の抗争や家庭内暴力など、様々な暴力に蝕まれた現代社会の姿が再現されている。 絶望感に苛まれた描写。しかしその暗闇のなか、足は自然とほのかな灯りに包まれた、「IMAGINE
PEACE」の判がある地図へと向かう。何十もの「IMAGINE PEACE」によって変形した地形に、私も二文字を加える。壁一面を覆う廃墟の写真の向かいには、「For
your memory of injustice and violence -Y.O.'04」と手書きのメッセージ。この作品を通じて感じたことは、歴史を振り返ってそこから学ぶこと。カフカの“毒虫”*とは異なって、オノの"cockroach"には平和への希望が残されているということだ。 *注:カフカの『変身』の原文に出てくる"ungeziefer"は insect(昆虫)、vermin(害虫)
またはbug(虫) と英訳されているが、英語圏では一般的には「ゴキブリ」と解釈されている。 |