![]() ![]() |
50人を越える業界関係者が集まったツアーは、ノリッチへの玄関であるロンドン・リバプールストリート駅前のグレート・イースタン・ホテルからスタート。ここで一時間ほどグループ展を見たあと、電車でノリッチ入りし、バスでセインズベリー視覚芸術センター、ノリッチ城、イースト・インターナショナルの会場と順に見てまわった。以下はそのレポート。 STAY @ Great Eastern Hotel まずはヴィクトリアン建築とテレンス・コンランの美学がひとつになったグレート・イースタンホテルで、グループ展「STAY」を鑑賞。美術鑑賞をしながら自慢のインテリアを見て歩くとでも言うように、ロビーからかつてのフリーメーソンの会合部屋まで、建物の随所に作家11人の作品が忍び込まされていた。 |
![]() ![]() |
|
Out There @ Sainsbury Centre for Visual Arts 電車に二時間揺られノリッチ入りした後は、バスでセインズベリー視覚芸術センターへ。去年の8月から改築が始まったここは、来年春のオープンに向け現在工事のまっ只中。今回の展示は、閉館中のセンターがブラジル、インド、オーストラリア、日本などの国々からアーティスト8名を招き、センターを囲む広大な緑地帯を使って行われていた。 |
![]() ![]() |
|
![]() ![]() |
(左)ボグダン・アキメスの家具入りテント。(右)マチコ・アガノのフルーツ付きカーテン。 |
三週間のレジデンシーの結果として発表された作品は、天然素材を用いたランドアート系が主流。木の幹と枝を芝生に並べて作ったクリス・ドルーリー(Chris Drury)の迷路は、ストーンヘンジの国らしく原始的な素材のなかに神秘的なルールがのぞく古代遺跡風。ヘイワードギャラリーの「アフリカ・リミックス」にも出品していたナイジェリアのエル・アナツイ(El Anatsui)は、色さえ塗ってなければ見過ごしてしまいそうなくらい自然な丸太の山。 一方、これらのナチュラル派に対し、日本のマチコ・アガノ(Machiko Agano)とポーランドのボグダン・アキメス(Bogdan Achimescu)は、人工素材で違和感を演出。果物のヴェールが枝からのびるアガノのインスタレーションは、この場に合っていながらも果物はキッチュなプラスチック製。モンゴルの遊牧民にヒントを得たアキメスの作品はレースのテントを使ったものだが、中にはベッドやテレビなど定住型の家具。一体、雨が降ったらどうなるのだろうかと考えてしまった。 East International 05 @ Norwich Gallery 鑑賞時間が20分しかなかったノリッチ城の展示は割愛し、この日のハイライト、イーストインターナショナル05の会場ノリッチ・ギャラリーへ。マーティン・クリードやジェレミー・デラーなどターナー賞作家を輩出しているこの公募展は、多くの若手作家が一度は当って砕けている美術界への登竜門的存在。選考者によって毎年傾向が変わるのが特徴で、公募展ながらも企画展のようなテーマ性をもった展示として国内でもユニークなポジションを占めている(ちなみに海外からの応募も可)。 今年の傾向は、破壊芸術の提唱者として知られるグスタフ・メツガー(Gustav
Metzger)が選考を努めただけあって、アンチアート剥き出しの「タカ派」。現代メディアとテクノロジーを駆使し、従来の表現に留まらない自由な発想とメディアを好むとともに、政治色の匂いたつ「活動」めいた作品が目立っていた。 |
![]() ![]() |
|
![]() ![]() |
(左)デイヴィッド・バロウズとサイモン・オサリヴァンのマンガとそれを使ったインスタレーション。(右)JJチャールズワーストとムスタファ・ヒュルシのパフォーマンス。 |
このような政治とアンチアートの組み合わせは他の作家にも顕著だったが、その多くがマンガを開けたら中はがちがちの学術書といったような似非ポップ路線を採用。その好例がデイヴィッド・バロウズとサイモン・オサリヴァン(David
Burrows & Simon O'Sullivan)の若手ペアで、ゲリラグループの活動とマニフェストをカブカル色の強いコミックとして表現。同様のスタンスはマーク・ウィルシャー(Mark
Wilsher)の作品にも通じ、机のうえにモニター一台とマーティン・ルーサーキングの演説文のコピーがたった一枚、憮然と置かれていた。これと一緒に行う予定のパフォーマンスを見逃したので何とも言えないが、本をコピーしただけの紙切れを見て「?」と思ったのは筆者だけではないだろう。 |
![]() ![]() |
|
そして今回筆者の周囲で良くも悪くも一番話題になっていたのが、若手評論家JJチャールズワースとムスタファ・ヒュルシ(JJ Charlesworth & Mustafa Hulusi)のペアによるパフォーマンス。アームチェアに悠長に腰掛け、テレビを見ながらそれについてああだこうだと、いわゆる評論家(armchair critic)を演じたもので、実際にペアのひとりが本物の評論家なだけに可笑しくもあったが、趣旨が伝わりにくかったのか意外と不評。熱演する画面上のピンク・フロイドを見ながら隣りのライターが「ライヴ8に行きたかった」とボソッと呟いたのが忘れられない。 とまあ全体的に、アンチアートとは小難しい概念をマンガやテレビやネットなどの既存メディアのモードを借りて伝えることなのかと思わせるような展示だったが、なかにはその反骨精神を古典的手法で表現している作家もいた。そのひとりが、オープニングの席上でメツガーが、破壊芸術のエッセンスが凝縮した作品と絶賛した中山かおり(Kaori Nakayama)の映像インスタレーション。この作品は、ガラスを打ち砕くという破壊行為が、暗黒の世界に無数の星を生んでいくという(実はガラスの亀裂)、破壊が生産のエネルギーへと転じてしまった作品だ。足を踏み入れたとたん宇宙の果てにワープしたような作品は、スローガン、マニフェスト、演説文、テレビ解説・・・と言葉の攻撃に疲れていた身に、感覚を呼び覚ますシャワーのように快適だった。 |
CAN.05
(Contemporary Art Norwich)は7〜8月にかけて開催された
展示についての詳細は各団体のサイトで(画像も見れます)
Stay
@ Great Eastern Hotel
Out
There @ Sainsbury Centre for Visual Art
East
International 05
Photo
credit)
Top right: Giovanna Maria Casetta, 'A Descent into Glamour', 2005,
photo © Kerry Brown
STAY:
'Drift', 2005, Flock
wallpaper, acrylic paint and postcards, photo © Richard Davies
STAY: Chris
Wood 'Optical Aggregate' 2005 Glass, mirror, water, light - installation
photo
© Richard Davies