| | デミアン・ハーストにギャリー・ヒューム。サーチにジェイ・ジョップリン。ヴィクトリア・ミロにモーリン・ペイリー。ブリットアート界の錚々たるメンバーがNY入りした先々週。でもまさかあの方までもがお忍びで来ていたとは!しかもご丁寧に、作品持参のうえで。 ゲリラ・アーティスト、バンクシーが自作を抱えて忍び込んだのは、昨年秋に改築オープンしたばかりのニューヨーク近代美術館(MoMA)やメトロポリタン美術館をはじめとするニューヨークの主だった美術館四館。 バンクシーが乗り込んだのは、警備員の目が光る昼下がりのことで、付け髭に帽子、レインコートを着た「英国の失業者」ルック風で入館。彼らの目を潜り抜け、何億もしようかという名画の横に自らの作品をこっそりと掛けて立ち去ったという。 3月13日、珍品の登場後わずか「数分後」に警備員が異変に気づいたと報道されているメトロポリタン美術館では、18世紀の油彩にまぎれて、金色の額縁に包まれたガスマスクを被った女性の肖像画が壁に掛けられていたという。 16日まで異変に気がつかなかったブルックリン美術館には、ナポレオンの時代を思わす油彩が置き去りに。本作は、将校がスプレー缶を持ち、その背景に反戦メッセージが「落書き」されたもので、今回四館に贈られた作品中もっとも大きな作品だったという。 17日になってやっと気づいたMoMAには、アンディー・ウォーホールのスープ缶シリーズを捩った小品が忍ばされたらしいが、ラベルが「キャンベル」から「テスコ」に変わっていたとのこと。アメリカ自然歴史博物館に贈られたものは、戦闘機、ミサイル、サテライトディッシュで改造したカブトムシの標本だったとか。 バンクシーのこの作品献上ゲリラ作戦がマンハッタンに上陸したのは今回が初めてのようだが、ここロンドンでは意外と馴染み深く、2003年11月にはロンドンのテート美術館で、昨年4月には自然歴史博物館をターゲットに行われメディアの注目を集めた。 しかし、英国一のゲリラ・アーティストの名もニューヨークまでは及んでいなかったようで、今回その素性の割り出しに時間がかかったようだ。米国のウェブサイトに「ゲリラ」活動中の作家の写真が公開され、やっと素性が明らかになったと報道されている。 人気ポップグループ、ブラーのアルバムカバーを手掛け、コレクターにはデミアン・ハーストら有名人が控え、有名美術館の壁とまではいかなくとも著名人の客間の壁は確保できているバンクシー。描く場と展示する場がなくてストリートに書いていた頃とはだいぶ違っているような。一度戦争の魔力にとりつかれた者が普通の世界では生きていけなくなるのと同じように、スリルに摂りつかれてしまったのだろうか。(トコ) 詳細はこちらのサイトで。画像も見れます。 BBCのサイトにも記事が載っています。 テートでのゲリラ作戦については2003年11月の日誌で。 その他のバンクシー関連の記事 日誌2003年12月30日、12月7日、9月26日、8月18日 バンクシーのオフィシャルサイト
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| | 久々にイーストエンドを回ってみたらフレッシュな作品にお目にかかった。レビューを書いている時間がなさそうなので、取り敢えず手短に紹介させてもらうことに。
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Hew Locke @ Hales Gallery 一昨年のフリーズ・アート・フェアで目立っていたヒュー・ロックの個展で、今回もお決まりのお花畑のようなエリザベス二世の巨大ポートレートを発表。ロックがロイヤルファミリーにとり憑かれるようになったのは、英国領ガイアナで過ごした幼少期の頃。学校の教科書の表紙には決まってクイーンの顔が描かれていたというが、当時はクイーンの顔に落書きをするなんてもってのほか。その反動なのだろうか、パウンド・ショップ(100円ショップの英国版)で買った小物で作られたロックのクイーンは、よく見ると、キッチュな造花の影からソフビ製のトカゲやへビが顔を出すグロテスクなもの。とり憑かれた作家とは彼のような人のことを指すのかもしれない…と思える感心せずにはいられない作品だ。 050304
- 050422, Hales Gallery Tea Building, 7 Bethnal Green Rd, London E1 6LA | |
Hew
Locke Black Queen, 2005 Mixed media onwooden frame Courtesy Hales Gallery (上)全体 (下)部分 |
| ■ Toby
Ziegler @ Chisenhale Gallery オップアートとインテリアデコレーションを足して二で割るとこんな作品になるのかもしれない。トビー・ズィーグラーの作品は、見る角度によって絵が変わるステッカーを思わせるような反射性の板に、花びらのような六角形の幾何学模様を無数にあしらった絵画が定番。一見、服の布地に良さそうなお洒落なパターンに見えて、遠近法をきっちりと抑えた風景画になっている点がかなり面白い。ギャラリーの人の話によると、ズィーグラーは日本のテキスタイルに造詣が深いようで、今回発表しているスフィンクス型の行灯のような立体には和紙と日本の染料が使われているとのこと。そういわれて見ると、模様全体が着物の柄を思わせなくもない。なかなかユニークな作品です。今週一杯。 050127
- 050313, Chisenhale Gallery  | |
Toby
Ziegler Installation view at Chisenhale Gallery Photo: Toyoko Ito |
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Hamish Fulton @ Interim Art 何でもアートになりうる時代。「ウォーキング・アーティスト」と自らを呼ぶハミッシュ・フルトンの場合は、歩くことが作品。歩いた先々で撮った写真や書いた詩(短文のようなテキスト)などがフルトンの作品となっている。よって今回の展示品も、「ウォーチェスターまで8マイル」とか、「後ろ向きで歩く」、「セントラル・サスカチュワンでの8日間の散歩」など旅の記録のような言葉が、70年代のコンセプチュアルアートを思わせる姿で展示室の壁を覆う。60年代に注目を受けるようになったフルトンはリチャード・ロングと並ぶランドアートの第一人者のひとり。自然と実際に交わることをモットーに、47日間で1022マイルを歩いた1973年以来、「歩くこと」から派生するものを作品にしているそうだ。 050212
- 050324  | |
Hamish
Fulton Installation View at Maureen Paley/ Interim Art Photo: Toyoko Ito |
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Ed Templeton @ Modern Art 少年がスケボーを床に置いてひたむきにノートをとっている。イーストエンドの商業ギャラリーにしては珍しい光景だが、作家がプロスケートボーダーのエド・テンプルトンとくれば納得。展示室は、そんじょそこいらの写真展よりずっとクリエイティブに「インストール」された雰囲気。ヴォルフガング・ティルマンスやユルゲン・テラーを思わすサブカルチャー色の濃い写真が、雨模様のペインティングを背景にコラージュのように並んでいる。ティルマンスと同じく写真集の編集とレイアウトも自らの手で行っているテンプルトン。今回の展示も素人っぽくみえる絵から写真のアレンジまですべて自らの手で行ったという。アウトサイダー・アート的な手作り感が魅力だが、残念ながら展示は先週一杯で終了。 050121
- 050306, Modern Art
(トコ) | | Ed
Templeton The Judas Goat, 2005 Installation view at Modern Art, London Photo:
Toyoko Ito |
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| | いまロンドンで絵画といえばサーチギャラリーで好評開催中の『絵画の勝利(The
Triump of Painting)』展。このキャッチフレーズめいたタイトルを初めて聞いた時には、「いまさら絵画ブームってのもねぇ…」と首を傾げたものだったが、意外にも業界内でのウケは良いよう。ちらほらと同調組みが出てきている。
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Triumph of Water Color @ Dulwich Picture Gallery 同調組みのなかでも最も派手にエールを贈っているのが、『水彩画の勝利(Triumph
of Water Color)』とサーチ・ギャラリーのパロディーみたいな題を打った展示を開催中のダリッチ・ギャラリー。
しかし題名はそっくりでも、展示内容は似ても似つかない「時代物」。現存の画家を中心に紹介しているサーチ・ギャラリーとは違って、こちらでは二世紀近くも前の王立水彩画協会(Royal
Watercolour Society)の設立メンバーの作品が紹介されている。
サー・ジョン・ソーン設計の建物内に入っているこらは、もともとルーベンスやレンブラントを得意とするギャラリーなので当然といえば当然なのだが、それにしても紛らわしい。偶然似たようなタイトルになってしまったのか、それともサーチ・ギャラリーにあやかっての命名なのかそこら辺の裏事情を知りたいところだ。 Dulwith
Picture Gallery, 050202 - 050424 Gallery Road, London SE21 7AD Web→
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Painting is Now @ The Glass House Gallery こちらもサーチと同じ、「絵画が一番!」という押しのムードが題名から漂ってくるショー。ロンドンの金融街シティーにあるグラスハウスギャラリーで10日から開かれるグループ展で、参加作家はRCA、チェルシー、セント・マーティンス、ウィンブルドンなどロンドンの有名美大の卒業生6名。ドローイング、抽象画、コラージュなど、やや広い意味で捉えられた柔軟性のある「絵画」が展示されることになっている。 | |
Kimiyasu
Nakamura Portrait 1, 2005 Tapes and marker on paper (79 x 79 cm) |
今が本当に絵画の時なのかどうかはさておいて、タイミングの良いこのタイトルの裏には、「絵画はもう終っている」という発言に対する対抗メッセージが込められているそう。「絵画はまだ魅力的。まだ可能性をもっている」。日本からの唯一の参加者である中村公泰さんが、ギャラリーのディレクターを含む参加者の心境をこう代弁してくれた。
出品作家は以下の通り:Kimiyasu
Nakamura, Lyn Lemont Webb, Marta Castiglioni, Philippa Russell, Sabi North, Tiziana
Mazzoli
050310 - 050411, The Glass House Gallery 2-3 Bull's Head Passage,
Leadenhall Market, London EC3
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RAdical Paintings @ Jerwood Space 若手による絵画展といえば、名門ロイヤル・アカデミー・スクール(RA)の卒業生による『RAdical
Art』も現在開催中。
「過激」を意味する「Radical」にスクールの略称「RA」を重ねたこちらの展示は、学院の前学長ブレンダン・ネイランド氏お墨付きのアー | |
Miho
Sato Moomin, 2003 Acrylic on board 36 x 27 cm Courtesy of domoBaal |
ティスト6名を紹介するもの。カジュアルが定番のロンドンのショーにしては珍しく、オープニングはネイランド氏の演説をもって盛大に幕開け。(内部の人の話によると、ネイランド氏はRAの古い体質を鍛えなおした評判のやり手。また、『消えた80,000ポンド』事件後に学長職を辞任した知る人ぞ知る業界の有名人でもある)。実際にラディカルかどうかは別として、さすがはRA。表現技巧の修練を感じさせる秀作が多ければ、経歴的にも華やか。例えばその一人が、ムーミンやガンダルフなどの楽しいキャラクターをこの上ない「鬱」なムードで描いている佐藤美穂さん。ロンドンに来て10年以上が経ってしまったという佐藤さんは去年、若手画家の登竜門「John
Moores」に入選。また、コレクターには人気トークショー番組『グレアム・ノートン・ショー』の司会者、グレアム・ノートンが控えるとか。
その他の作家たちも同じく華々しく、サーチのお眼鏡に適ったとか、ディノス・チャップマンが驚いただとか、大手銀行HSBCの会長がコレクターに控えるとか、招待状は野次馬心をくすぐる文面で一杯。なんとなく絵画以上にこちらの方が印象に残ってしまった気がする。
出品作家は以下の通り:Rachel
Shannon, Rui Matsunaga, Hannah Wooll, Miho Sato, Peter Harrap, Natasha Kissell 050217
- 050313, Jerwood Space 
(トコ)
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