
イギリス第二の都市なのに、日本人にはマンチェスターとかに比べてイマイチ知名度の低いバーミンガム。昔からの重工業都市なのも、その一因なのかもしれません。しかし、バーミンガムだって結構、文化的にも頑張っているのです。イギリスで初めて地元のシンフォニーオーケストラができたのはバーミンガムですし(今は赤字で再編に必死なのですが)、カルチャースタディー発祥の地もバーミンガム大学と言われています。(ちなみに今年、学部が閉鎖される予定です。)また最近では、2008年のEUのCity
of Culture候補にも挙がっています。(他にもマンチェスター、ニューキャッスルなども候補地なので、ちょっと分が悪いのですが)
そのバーミンガムの文化施設の中でも一目置かれているのが、Ikon
Galleryです。90年代、駅前を中心とした街の中心部の歩道化の際に、運河沿いのビクトリアン・ゴシックの元小学校に移転。常設展示やコレクションをもたず、実際にバーミンガムを訪問しワークショップなどを通して市民と交流できる人を基準に、現在存命中の現代作家の中から適任者が選考されています。日本人アーティストの例で言えば、旅とその過程を大切にしている島袋道浩さんが紹介されました。明石のタコに続いてバーミンガムでは、きゅうりを積んだボートに乗って道中ピクルスを作りながら、地元の人達とも交流しつつバーミンガム入りしました。
Ikon Galleryが地元市民の参加を必須条件としていることは、2002年9月のHarley Newman(ヘイレイ・ニューマン)のオープニングでもみられました。架空のイベントを写真やビデオとして記録している彼女のオープニングには、いかにも場違いなダボダボなズボンにバンダナ姿の若い少年達が招待されていました。彼らはイワユル不良少年達でIkon
Galleryとユースワーカーから構成されているDJワークショップの参加者でした。彼らは最初、溜め息を袋に詰めている写真や、集団でデイジー(雛菊)になりすますビデオに熱中しているハイソな人達を、奇妙な動物でも見るように傍観していました。でも、教育スタッフがニューマンの写真のフィクション性とノン・フィクション性の境界の曖昧さなどについて説明し出すと、「あ〜playing
Beckだね、僕にだってできるよ」と言って参加してきました。playing Beckとは、ミキシングのお陰でCDとしての完成品は何層ものメロディーや音のコラージュをして良い出来なのに、生のライブになると途端に音が薄く物足りないようになってしまうミュージシャンBeck
から発展して、どうもフェイクのことを指すスラングらしいのです。それとはちょっと違うような〜と感じてしまいましたが(Beckはなかなか歌唱力あったし、Newmanは故意にフェイクなんだし。。。)、何はともあれ作品に少し親近感を覚えてくれたようでした。
いまだに重工業都市の重さを持ち移民が急激に増加しているバーミンガムには、なかなかコンテンポラリーアートを始めとしたアートが根付きにくいところがあります。しかし、Ikon
Galleryをはじめ地元と密着した文化施設の努力の甲斐あって、少しずつ開花し始めています。この変化には、ギャラリーの教育施設としての存在が大きく貢献しているように私には思えます。Londonとはまったく違うアートに対しての価値観や取り組みには、一見の価値があるのではないでしょうか。(みよ)

Ikon Galleryの裏手にある運河の周りには、オシャレなカフェがいっぱいあります。夏にもなると運河沿いはナローボートの観光客で賑わいますが、一番の人気が「The Pit in」 というパブ。運河に横付けしたボートから直接アクセスできるようになっていて、二重、三重に停泊されたボートが船長達の帰りを待っています。パブの中に入ると、壁にはナローボートの写真や、1920年代のバーミンガムの写真が飾られています。その昔、海にも面していないバーミンガムが工業都市として栄えたのは、ここが運河の要だったことによるものです。そんな昔の面影をちょっと垣間見られる、なんだか懐かしいパブです。
