3月28日
Anish Kapoor, Tate Modern
Tate Modernのタービンホール(Turbine Hall)のインスタレーションといえば、2000年5月のオープン以来テートが誇る企画の一つで、その制作には1,250,000ポンドという桁はずれの費用が投入されているという噂。
第一弾は当時89歳のベテランアーティストLouise Bourgeois(ルイーズ・ブルジョア)が、第二弾は昨年逝去したスペイン人の彫刻家Juan Munoz(ホワン・ムノズ)が担当しました。
このプロジェクトの第三弾に選ばれたのが、イギリス人彫刻家のAnish Kapoor(アニッシュ・カプーア)。ボンベイ生まれロンドン在住の彫刻家で、1990年にベニス・ビエンナーレ出場、翌年にはターナー賞受賞、国内外での個展多数というベテラン。
インスタレーションの公開は今年10月とまだまだ先のことですが、すでに構想を練りはじめて2ヶ月が経過しているらしい。British MuseumのGreat
Courtのための彫刻も同時進行しているそうで、こちらも年末には見れるということ。今年の後半はKapoorの存在が気になりそう。
3月27日
Body Worlds展で男を逮捕
22日付けで紹介しました「Body Worlds」展で、昨日、男が展示品に攻撃を加えたとして逮捕されました。 BBCNewsによると、男は「The
Organ Man」と題された死体をハンマーで叩き、展示台から落としたということ。同放送局が集めた目撃者の証言よると、男は止められるまで展示品を叩き続け、その後到着した警察官に護衛され会場を後にしたとのこと。(BBC
News、3月26 日) 展覧会の企画者であるドイツ・ハイデルベルク大学の解剖学者Gunther von Hagens (グンター・フォン・ハーゲンス)教授は、今回の事件を「sheer
vandalism(完全なる芸術破壊行為)」と非難しているもよう。「このような事件は未だかつて起きたことがない」とも。(BBC News、3月26 日)
実は、これが始めての抗議行為という訳ではありません。オープニングの土曜日には、切開された腹から7ヶ月の胎児がのぞく妊婦の死体に、ある抗議者によって毛布がかぶせられたという。さらに、この抗議者は展覧会を「horrifying(恐るべき)」「disrespectful(失礼な)」と非難しながらフロアに絵の具を流して、警備員に退場を求められたという。(BBC
News、3月23日) 今回の展覧会にはオープニングの前から強い反対の声が上がっていました。Sir Teddy TaylorやAnthony
Steenら保守党議員からの非難発言や、厚生省による法的問題に関する調査、Alder Heyスキャンダルの被害者家族からの抗議など、ここ2週間ほど新聞の紙面を賑わしていました。
しかし、こういった喧騒のなか実際に展覧会を訪れた人の中には素晴らしい、面白い、とても科学的といった肯定的な感想を述べている人も少なくなく、本当のところは賛否両論といった状況のようです。(トコ)
"Body Worlds" Atlantis, 02/03/23 - 02/09/29
フォグレス日誌22日付け BBCの記事(3月26日 、23日 、22日 、12日 )
3月24日
展覧会:Saving Faces
一昨日のBody Worldsに引き続き、「アート&医学」系の展覧会をもうひとつ。National Portrait Galleryで開催中の「Saving
Faces」展で、こちらは外科医とアーティストのコラボレーション。 会場には癌や怪我、顔の変形などにより手術を余儀なくされた患者の肖像画が術前、術後という形で展示されている。片目がなかったり、目が段違いになっていたりするショッキングな形相が目立つ一方で、綺麗に戻った術後の姿もチラホラと見える。
この企画はSt. Bartholomew HospitalとRoyal London Hospital でコンサルタントを務める 顎顔面外科医 Iain
Hutchison(イアン・ハッチソン)医師が1999年に始めたもの。 「Saving Faces」プロジェクトは、現代の外科技術をもってできることと、顔に障害をもつ人々も幸せで満ち足りた生活を送れるということを、一般の人に理解してもらいたいという動機から始まった。また、手術によって変わる顔を描く特別な機会をアーティストに与えたかったというのもその動機のひとつ。
肖像画の作者はグラスゴー出身の画家Mark Gilbert(マーク・ギルバート)。病院に「Artist in residency」として加わり、患者の術前、術後の変化をキャンバスに記し続けた。手術による顔の変化をつかむために実際に手術に立ち会ったことも少なくなかったという。
[よく患者から同意がえられたな…]というのが正直いって私の第一印象でしたが、カタログによると患者たちは肖像画の制作はもちろん展示に対しても積極的だったとのこと。外見から内面を判断するのではなく、外見を超えた次元で自分達をみて欲しいという気持ちが彼らを駆り立てたようです。(トコ)
"Saving Faces" National Portrait Gallery, 02/02/27 - 02/04/21
3月22日
Body Worlds
98年に日本で公開された「人体の不思議」展のロンドン版「Body Worlds」が明日からEast EndのAtlantis(アトランティス)で始まります。
今回の展覧会では死体25体とぶつ切りにされた器官175個が展示されるということ。 展覧会の企画者は「プラスティネーション」(Plastination)という死体保存技術で世界的に知られるドイツ・ハイデルベルク大学の解剖学者Gunter
von Hagens(グンター・フォン・ハーゲンス)教授。 死体とアートは遠い関係のようで実は密接。レオナルド・ダ・ヴィンチ、レンブラントら巨匠が、人体への探求とその描写に死体を用いたことは結構有名。死体は現代アートにもしばしば登場し、Mat
CollishawやAndres Serranoらの写真の題材にもなっています。 しかし、描写の枠を超え死体そのものの展示となると話は別なよう。センセーションにかけては免疫のあるここロンドンでも今回の企画に対しては非難の声がかなり強いようです。
フォン・ハーゲンス教授の死体は、一部の囚人や浮浪者の死体を除き、その大部分が医学の研究目的のために寄付されたもの。これらが娯楽あるいは芸術という名のもとで展示されるのですから、法的に問題がなかったとしても、倫理的な意味で議論をかもすのは不思議とは言えません。
特にここイギリスでは、医師が家族に無断で何百人もの乳児の死体から臓器を摘出していたというAlder Hey(アルダー・ヘイ)スキャンダルが去年騒がれたばかり。だから死体の扱いと臓器の展示に対する一般の反応は敏感で、当然のことながら同事件の被害者の家族からは今回の展覧会を中止する要望が出ています。
また、教授の研究のビジネスサイドを問題視する見方もあり、寄付された人体で研究資金を稼ぐアプローチに対し一部から不満の声が出ているようです。The
Guardianによると保存処理をされた死体は19,000ポンドから37,000ポンドで大学や研究機関に売られ、この収益は研究資金として再投入されているとのことです。
しかし、様々な非難に対し、British Museumのミイラをはじめ多くの博物館がすでに死体を展示しているという「Body Worlds」展の企画側の意見も一理あり、死体を展示してるという理由でこの展覧会だけを非難するのは難しいところ。新旧の大きな違いはあっても分類すればどちらも死体。だから片方が許されるならば、もう片方だって許されて当然だろうという議論が成り立つ訳です。
日本で55万人とも250万人とも言われる観客を動員し、去年ベルリンでも大成功を収めたというこの展覧会。ルネサンスを出発点とするアートと解剖学との関係を改めて考えさせられることになりそうです。
(トコ) "Body Worlds" Atlantis, 02/03/23 - 02/09/29
The Guardianの記事はこちら
関連ニュース:日誌27日 付け
3月19日
ベルリンから
連日ギャラリーを訪ね歩いているうちに早くも5日が過ぎてしまいました。噂に聞いていた通りベルリンはギャラリーの数がものすごく、旧東ドイツ側にあるMitteという中心部だけに的を絞ったとしても見ても見切れないという感じです。
今回訪れたギャラリーについての詳細はまた今度ゆっくりということで、今日のところは見た展覧会の中から印象に残ったものを幾つか。 まず、ベルリンでのICA的存在Kunst
Werke では1999年のターナー賞ノミネート者Jane and Louise Wilson のビデオインスタレーションが展示されていました。
展示作品「Proton, Unity , Energy, Blizzard」は4枚の巨大スクリーンからならる作品でロシアのスペース・プログラムをテーマにしたもの。宇宙計画に携わってきた工場や基地、ロケット発射台などがドラマチックに時に建築美、技術美を強調するように捉えられていて惹きつけられました。
Jane and Louise Wilson, Proton, Unity, Energy, Blizzard
の展示風景。
Deutsche Guggenheim Berlin (ドイツ・グッゲンハイム・ベルリン)ではBill
Viola (ビル・ヴィオラ)展が開かれてました。展示作品は同ギャラリーのために制作された新作「Going Forth by Day」で5つのパートからなるビデオ・サイクル。
この作品はルネッサンス初期の画家Giotto(ジオット)のフレスコ画 (Scrovegni
Chapel, Padua, Italy)にインスピレーションを得たもので、誕生、死、再生が当時のフレスコ画サイクルのようにビデオごとに展開されていました。サイクルというフォーマットと宗教画的なトーンは、去年のAnthony
d'Offay Gallery, London での Catherin's
Room を思い出させます。
Bill Viola,
Going Forth by Day , 2002から 左)3. The Deluge 右)4. The Voyage Deutche
Guggenheim Berlin
最後はHamburger Bahnhof 。これは展覧会というよりは建築、展示スペースそのものが気に入ったというものです。
ここは1996年にモダン&コンテンポラリーアートの美術館としてオープンしたところで、パリのオルセー美術館と同じく古い駅を改築したもの。自然光たっぷりの広々とした空間で見れるアンゼルム・キーファー、アンディー・ウォーホール、ロバート・ラウシェンバーグは最高です。人もまばらでほぼ展示室独占でした。(トコ)
Hamburger Bahnhofのメインギャラリー。右手前はキーファーの「Census」。
3月13日
アートしてる牛
狂牛病、口蹄病と牛に関しちゃあまり良いニュースのないイギリスですが、この夏に500頭もの牛の大群がロンドンのメジャー・スポットに押し寄せるということです。
打撃を受け続けている畜産業界の巻き返し? と思いきや実はこれ、アメリカのチャリティー団体Cow Paradeが企画するパブリック・アートのイベント。アーティストらによって塗られた牛の彫刻が観光名所やら駅に出没するという。
実はこの企画、本当は去年の夏に実施される予定だったらしい。すでにアーティストの選出も済み展示場所も決まり、いざ決行!という時になって例の口蹄病騒ぎが起きてしまい延期になってしまったという。
早くも数頭が今月ロンドン入りし、うち3頭がナショナル・ギャラリーの正面玄関脇に飾られています。Keith
Wallaceによるもので、現在同ギャラリーで開催中の展覧会オランダ人画家Aelbert Cuypへの敬意を込めてペイントされた牛だそうです。
ロンドンのイベントは、シカゴ(1999)、ニューヨーク(2000)、カンザス・シティー(2001)、ヒューストン(2001)に次ぐもの。目的はアートの促進とイギリスのチャリティー団体
"ChildLine"(問題をかかえる子供ための24時間体制のヘルプライン)のための資金集めとのことです。 イベントの終了後には、大部分の牛達がチャリティー・オークションに送られることになっています。ちなみにニューヨークではティファニーの牛が60,000ポンドで買われていったということです。(トコ)
詳しくはCow
Parade のサイトで。
3月13日
Gary Humeの塀
パブリックアートに関する情報をもうひとつ。こんどはイーストエンドのFashion Street(ファッション・ストリート)。 パブリックと言ってもこんどはかなりの紛れ込み路線で、超地味なエリアの建築現場の前にたてられた塀が作品。アーティストは、さりげない感じの演出と対比をなすビッグ・ネームGary
Hume(ギャリー・ヒューム)。今をときめくヤング・ブリティッシュ・アーティストの一人ですね。スポンサーはBBCで、新デジタルチャネルBBC4を記念して企画されたもの。
物好き路線に走っていると非難されるのを覚悟で見てきましたが、受けた印象はあまりにも「普通」過ぎて誰も気に留めてないといった感じでした。まあこれが狙いなんでしょうけどね?今月の28日まで置かれているそうです。(トコ)
Gary Hume at Fashion Street Fashion St.は地下鉄Liverpool St.から徒歩7〜8分です。
3月13日
展覧会情報
昨日につづき、カレンダー「East
Endの展覧会 」に新情報をアップしました。Saatchi Gallery, Interim Artなど。 「link 」のページに最近日誌などでご紹介しましたギャラリーへのリンクを追加しました。
3月13日
お知らせ
明日から一週間、ベルリンのギャラリー事情をのぞいてきます。現地からのレポートは難しいかもしれませんが(実は今クマさんにメビウス君のモデム設定とかいろいろとお願いしてるところです)、いずれじっくりレポートする予定ですので待ってて下さいね。 トコ
3月12日
展覧会情報
カレンダーに新情報をアップしました。 「East
Endの展覧会 」には、White Cube 2, The showroom, Victoria Miro Galleryなどイーストエンドで開催中&予定の展覧会を8つほど。
「メジャー展示スペース 」には、明後日からスタートするICAとTate
Britainでの展覧会を。
3月9日
クマの独り言
「クマの独り言」に新しいコラム記事を追加しました。美術取材のアングルから、クマさんが「プロシューマー」向けデジカメを徹底分析。foglessで使ってるデジカメについても載ってます。
「クマの独り言」へはmisc . からどうぞ。
3月8日
BBC4
ここのところ新聞などでアート系番組の少なさが指摘されてきたBBC放送が、映画、音楽、ビジュアルアートなど文化面に重点を置いた新チャネル「BBC4」を3月2日からスタートしました。
ビジュアルアートの最初の番組は3回シリーズの「Britart」。ヤング・ブリティッシュ・アーティストを中心に過去13年間のイギリスの現代アートの動きを追うもの。(3回シリーズ、金曜9時、本日よりスタート)
テレビライセンス購入者であれば受信はタダということです。ただ、デジタルチャネルなので受信にはデジタルテレビ(IDTV)もしくはデコーダーが必要となります。
(…実は私も見れなかったりします) 詳しくはBBC4のサイト で。
3月7日
更新情報
日誌の2月分を「misc. 」のページに移しました。
3月7日
Fair
Royal College of Art(RCA)で19日から24日にかけて国際アートフェアが…もとい、国際アートフェア形式の展覧会が、開催されます。
企画はRCAの修士コースCurating Contemporary Art の生徒らによるもの。コペンハーゲン、プラハ、イスタンブール、モスクワ、メキシコ・シティ、ハバナら世界15の都市からのアート関係団体が、アートフェア風にデザインされた展覧会会場でお店を開いてくれるみたいです。
アーティストとギャラリー、制作と販売、文化と経済のミックスというところに重点が置かれているようです。参加団体はすべて両者をうまく取り入れたハイブリッド型ということで、どんなフェアになるのかが楽しみ。新人アーティストさんの作品もたくさんあるということです。
Fair 020319 - 020324, 1200-2000、入場無料
詳しくはRCAのサイト で。
3月7日
Atom Egoyan "Steenbeckett"
Royal Academy of Artsの裏手にMuseum of Mankindという博物館が昔あったのをご存知でしょうか? 博物館は数年前にBritish
Museumに移動してしまったらしいのですが、今この建物でちょっと変わった展覧会が開かれています。 出展アーティストは「The Sweet
Hereafter(スウィート・ヒアアフター)」などで知られる映画監督のAtom Egoyan(アトム・エゴヤン)。作品はインスタレーションを幾つかあつめたようなインスタレーション「Steenbeckett」。
この展覧会は、映画をテーマとする博物館ツアーのようになっているのが特徴。会場内に入るとまず薄暗い映写室に案内され、そこから編集室、フィルムの廃棄場と順に見てまわる仕組みに。もちろん、みな巧妙に演出された作品の一部です。
でも目玉はフィルムと編集装置Steenbeckを使った最後のインスタレーションです。映画の上映室の中に600メートルもあるフィルムが蜘蛛の巣のように走り、このフィルムが奥に置かれたSteenbeckを経由してカタカタと音を立てながら動いています。
機能を奪われてしまった装置とフィルムからはなんとなく物悲しい空気が。暗闇にクールに光るグリッドがこれらをますます虚しいものに。(ちなみにフィルムは「Krapp's
Last Tape」で、原作はSamuel Beckett, 監督はEgoyan自身) デジタル技術の進歩とともに最近ではコンピュータ編集があたり前になってしまったという映画の世界。そんななか古き良き時代を偲ぶエゴヤンの作品には、名画ニュー・シネマ・パラダイスに通じるノスタルジアが感じられました。
(トコ) 3月17日まで。4GBP。 予約が必要なのでお忘れなく。
詳しくは主催団体Artangelのホームページ で。
3月6日
展覧会情報
カレンダーの「West
Endで展覧会 」に新情報をアップしました。商業ギャラリーGagosian, Houldsworth, Asprey Jacquesでのショーに、旧Museum
of Mankindで開催されているArtangelの企画展を載せてあります。
3月4日
展覧会情報
カレンダーのページに新情報をアップしました。 「メジャー展示スペース 」には、先週スタートしたNational
Portrait GalleryとSerpentine Galleryでの展覧会を。 「テムズの南側 」には、London
Bridge近辺で催されているグループ展2つを。
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