6月24日
いざ、ゴールドスミスへ!
約三ヶ月ぶりにロンドン南東へ行ってきました。今回の目的地は、ゴールドスミス・カレッジのディグリーショー。実は、遠〜いな…なんて思いながらチョークファームの穴倉でくすぶっていたところ、同カレッジの卒業生の○○さんから「サーチが来たらしいですよ」との情報を入手。人参につられた馬ように、私も翌日ニュー・クロス・ゲートに立っていました。
ゴールドスミスでは、ファイン・アート、テキスタイル、美術史&ファインアートの3学科の制作発表が披露されていました。すべて見たかったところですが時間の都合上(あと体力もです…)、今回は一番気になるファイン・アートにフォーカスすることにし、地図を片手に校舎本館とキャンパス裏手にある会場二つを渡り歩きながら、40数名の俊英達のブースを見てまわりました。
ディグリーショーと言うと、気づいた時には終わっていたという事も少なくなく私には未開のエリアでしたが、今回行ってみてビックリ。このまま美術館に出せます!というほどの完成度の高い作品がごろごろありました。展示の仕方にも手抜かりがなく、そこら辺のアートフェアなんかよりもずっと効果が練られていたと思います。(もちろん、ロンドンの美大すべてがこういう風ではないようです。……制作費も随分かかっているんでしょうね、きっと)
さて、記憶が薄れないうちに、今回見た作品のなかからハイライトを幾つかご紹介。まずは本館からで、ここで一番強烈だったのが、その轟音に一瞬、会場内のみんなが目と目を見合わせた、Oliver
MacDonald さんのキネティックな立体でした。こちらの作品は粗大ゴミ置き場にでもありそうなガラクタの載ったオンボロ机なのですが、突然、机に取り付けられたディスク状の物体が暴走した電動ノコギリのように回りだし、あたりに異様な緊張感を作り出していました。一歩下がったところから、こりゃ、立派な凶器になるわ、と妙なことに関心しながら魅入ってしまいましたが、たとえ粗大ゴミであれ凶器であれ、人の関心を惹き付けるパワーは今回群を抜いていたと思います。
その横に忍び込まされたJee Yang Lee さんの水槽もなかなかでした。こちらは展示室の窓にブルーの液体(?)を入れて水槽にしてしまったという、極、極、シンプルなものなのですが、狂った凶器のすぐ横ということもあって、そのクールさが乙なくらい活かされていました。Leeさんはその他にも、海底に沈んだ精神病棟といった感じの、白い部屋の片隅に真っ青な窓(水槽)を埋め込んだ部屋も展示していました。こちらの作品では、窓から深海を覗き込もうとすると私自身の青ざめた顔が鏡に映り、精神病患者ってもしかして私?というようなブルーな体験ができました。(あんまり見たくない顔でしたけど…)
キャンパス裏のLA3とStudioBでは、立体のほかに映像の存在も際立っていました。でも、約2時間で40人の作品を見るという時間の関係上、じっくりと見る余裕はなく途中から見てもわけがわからなくて、結果として映像の内容自体よりは展示方法のほうに目が行ってしまいました。と言うことで、ここでは映像を鏡に反射して天井に投影したJi
Lamey さんの作品や、布団で寝そべりながら見れるようにアレンジされたLi Ping Chan さんの作品が印象に残りました。(ソフトに流れる流暢な英語が子守唄となって、眠ってしまいそうでしたが…)
ボーっとしながら二階に上がると、こちらには何やら大工めいた作品がごろごろ。ここで注目を集めていたのがMunetaka Shinya さんの触って動かして中に入って体験できる塔で、何やら楽しそうな雰囲気にそそられ私もさっそく挑戦してみました。こちらの作品は外見は日曜大工風の素朴な井出達なのですが、台車付きの重い板をキコキコと動かし中に入ってみると、驚いたことに、そこは360度、上も下も鏡ばりの目が眩むような世界となっていて、未知な異次元空間のようでした。鏡に映った夥しい数の自分のコピーに取り囲まれ、思わず万華鏡のなかのガラス玉になった気分でした。(トコ)
コメントさせて頂いた方を含め、ゴールドスミスの皆さんの作品の画像は大学のサイト で見れます。
6月12日
ターナー賞ノミネート者発表
うかつにも、出遅れてしまいました…。なんと私が久々の日本を満喫している間に、ターナー賞ノミネート者の発表があったようです。今年のラインナップは、Jake
& Dinos Chapman (ジェイク&ディノス・チャプマン)、Willie Doherty (ウィリー・ドハティ)、Anya
Gallaccio (アニャ・ガラチョ)、Grayson Perry (グレイソン・ペリー)の四人。(昨日のBBC1のサーチ・ギャラリーの特番に、最初と最後の二人が頻繁に登場しその目立ち具合が引っかかっていたのですが、こういうことだったのですか。納得。)
まずは、去年秋、ホワイト・キューブ(WC)での個展が絶賛されたチャプマン兄弟 。ノミネートはWCでの展示と、先週まで個展が開かれていたModern
Art Oxfordなどでの展示が評価されてのこと。WCで公開された「Chapman Family Collection」全33点は(マクドナルドに心を奪われたプリミティビズムって感じの木製彫刻です)、あのチャールズ・サーチが展覧会オープニング直前にWCに出向き百万ポンド(約2億円)でゲットしました。氏はチャプマン兄弟の三年前の地獄絵図ジオラマ「Hell」も所有。「Hell」がターナー賞ノミネートに至らなくて落胆と囁かれた氏も、今回はさぞ満足でしょう。
映像作家ウィリー・ドハティ は'94年のノミネートに続いて二回目の選出(その年はアンソニー・ゴームリーが受賞)。今回の選出はIrish
Museum of Modern Artと第25回サンパウロ・ビエンナーレでの展示で発揮された彼の映像作品の強さと適切性が評価されてのこと。
アニャ・ガラチョ は、フォグレスでもレポートしたTate
Britainでのインスタレーション 、さらにはバーミンガムのIkon Galleryでの展示が評価されての選出。ターナー賞が心機一転を図り再スタートした'93年以降YBA世代が続々とノミネートされましたが、そんななか彼女はチャプマン兄弟と並んで目利きが張り巡らしたアンテナに引っかからなかった貴重な存在。選ばれるべくして選ばれた、という感が拭えません。
最後の一人はチャールズ・サーチのお気に入りグレイソン・ペリー で、去年、バービカン・センター(カーブ)で個展が開かれました。彼のイコン作品は、古典的な造形の壷や花瓶に、エッチでバイオレントな漫画風のイメージをあしらった立体作品。ペリーと言えば、数ヶ月前にディーラー、ローラン・ディレイ氏との決別が業界で話題になり、こちらのほうが作品以上に記憶に残っていたりします。(噂によると、サーチがディレイ氏にペリーの壷を買い取って欲しいと願い出たのを、氏が断ったことが決別の引き金になったようです。そこには、サーチがディレイ氏から購入した時の価格の何倍もの価格で引き取らねば…という図式が簡単に想像できたりします。大物を抱えるとディーラーも大変ですね。)
とまあ、記憶を辿ってざっと書いてみましたが、今年は立体、映像、インスタレーションという顔ぶれで、絵画は全滅なようですね。去年はもっぱらバランスのとれた選出と誉められたターナー賞でしたが、今年は伝統重視のコンサバ組みからどんな反応が出るかが気になるところですね。(トコ)
詳しくはテートのサイト で
6月11日
元気あり余るアート熱
今日のロンドンは、新聞もテレビもこぞってベッカムのバルセロナ移籍(?)のニュースで持ちきりですが、そんななかで私の目を釘付けにしたのが、ベッカム旋風に負けじとも劣らぬ迫力で報道されたデミアン・ハースト とターナー の二人。
まずはアート界のベッカム、デミアン・ハースト から。「ミッドライフ・クライシス」と自ら語り、ハーストのキャリアがキリスト教に傾倒した第二フェーズに突入したことは4月16日付けの日誌でレポートしましたが、その第一弾となる新作が昨日披露されました。
9月にホワイト・キューブで公開される新作は、レオナルド・ダ・ヴィンチの「最後の晩餐」から発想を得た立体作品で、名画に登場する13人の使途達を、噴き出す赤ワインの上で飛び跳ねるピンポン玉として表したコミカルなもの。本当はワインの代わりにグロテスクさがグッと増す血を使いたかったようですが、キリスト教の礼拝でワインがキリストの血として象徴的に用いられていることを受け、今回は婉曲的なアプローチに出たもよう。
秋の個展には定番のホルマリン漬けも登場し、六本足の怪牛、牛の頭がのぞく棺などが、「キリストの昇天」や「使途の死」といったクラッシックな響きの題名を伴って登場するみたいです。いずれも宗教編と自らが語る第二フェーズに相応しいいタイトルですが、どちらかと言うとブラックミサの方が似合っているような。
さてお次は、オークションにかければ5百万ポンド(約10億円)は下らないと言われる英国が誇る巨匠のなかの巨匠ターナー で、テート・ギャラリー率いるプロジェクトによって、行方不明になっていた作品500点が掘り起こされたということ。インターネットを使って世界中のコレクター、ディーラー、美術館関係者らに呼びかけたところ、多くの人から情報が寄せられ、沢山の埋もれた名作にたどり着けたと言うおめでたい話。
今回所在がわかった作品のなかには、1851年にターナーが没して以来一度も公開されたことのなかった貴重な作品も含まれているということ。The Independentの第一面には、1882年以来行方がわからず、19世紀の英国の美術評論家ジョン・ラスキンが1840年に63ポンドで購入した「Harlech
Castle」の写真が紙面半分を飾っていました。 大々的な発見なようでいて、見方を変えればこれまでのズサンな記録管理が暴露されたに過ぎないとも取れる今回の発表ですが、この分野を研究している学者にとっては、おそらく願ってもない朗報でしょう(と言っても、行方がわからない作品はまだ400点もあるとのことですが…)。さらに、今回発掘された500点はテートが運営するターナー専門のオンラインギャラリーに加えられ、ネット上で閲覧できるようにもなるようです。
とまあ、二つほど最新ニュースをご紹介しましたが、ロンドンの元気あり余るアート熱は夜まで続くようで、今晩10時半からはBBC1で移転オープンしたサーチ・ギャラリーの密着レポートが放送されるようです。(トコ)
デミアン・ハーストに関する詳細記事はこちら で
ターナー発見に関する記事へはこちら から
テートのオンラインギャラリーTurner
Worldwide へ
6月11日
美大に行ってみよう!
とくに美術を勉強していない素人にとって、美大は美術館とは違って足を踏み入れにくい存在。でも、ちょっと気になるな〜という方には、卒業制作展がたけなわの今月が絶好のチャンスです。と言うことでフォグレスでも早速、目ぼしいところをリストアップ しました。
ロンドンの有名美大の卒業展とくれば、目利きのギャラリストやコレクターが押しよせるイベントとしても知られています。作品のみならず、スカウト劇までも見れてしまうかもしれませんね。お見逃しなく。
それと、ちょっと話しはそれますが、美大にちなんで今話題になっている美大生の快挙話を一つ。先日、英国の肖像画のアワードで最高峰とされるBT Portrait
Awardの受賞者の発表がありましたが、若干21才の学生に軍配が上がるという異例の結果に終わりました。受賞者はリーズ大学の最終学年に在籍する学部生Charlotte
Harrisで、この賞の常連である次点の40歳の男性作家を振り切っての受賞だったようです。学生の凄さを思い知らされた一例でした。(ナショナル・ポートレート・ギャラリーで展示中)
Top
Home