6月25日
バーゼルから
■ Art Basel 2004 世界最大のアートフェア、Art
Basel にお邪魔してきました。16日から21日にかけて開催された今年のフェアは五日間の来客者数が5万2千人、訪れた報道陣は1600人と、これまでの記録を塗り替える数。参加したギャラリーはロンドンのフリーズ・アート・フェアのおよそ二倍の270団体、会場はその三倍はあるかと思える広さ。 なかでも最大のアトラクションは、国内外の作家69人が参加した国際美術展、Art
Untitled 。ドクメンタやべネツィア・ビエンナーレと並ぶ大スケールの作品が多数紹介されました。展示風景を撮影させてもらいましたので近いうちに掲載する予定です。それまでは取り敢えずあちらのホームページ で。(トコ)
Elmgreen
& Dragset Short Cut, 2003 Photo: toyoko ito Erwin
Wurm Fat House, 2003 Photo: toyoko ito
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ヘルツォーク&ド・ムーロン展 バーゼルと言えば、あのテート・モダンや最近では南青山のプラダで話題を呼んだ建築事務所ヘルツォーク&ド・ムーロン のお膝元。いまやバーゼルの顔となった彼らの展覧会が、自らが設計したエマニュエル・ホフマン財団のアート管理施設Schaulager(ショーラガー) でタイミングよく開催されていました。 ■ バイエラー財団美術館(Foundation
Beyeler) バーゼル郊外にあるこちらは、エルンスト・バイエラー氏が設立したバイエラー財団が運営する美術館。緑の庭園のなかにひっそりと佇む平屋建築は、イタリアを代表する現代建築家レンゾ・ピアノ による設計。自然と融合したその姿はまさしく絵に描いたよう。
開催中の展覧会は、「カルダー&ミロ 」展と「フランシス・ベーコン 」展の二展でした。両企画とも中身の濃い見ごたえのある展示となっていましたが、特にお勧めなのが「カルダー&ミロ」。1928年にパリで出会って以来お互いに刺激しあってきた二人の活動の接点が、合計130点の展示物を通してみごとに再現されています。 とりわけ印象的だったのが、ミロとカルダーの間に流れていた絶妙な対話。具象とも抽象とも断定できない有機的な形象を用いてファンタジックな世界を創り上げたミロの世界は広く知られていますが、カルダーの世界もまたミロに限りなく近かったよう。彼の世界は云わばミロの立体版で、絵画から飛び出したとでも言いたくなるほど接点が濃い。そんな両者を隣り合わせに見れるとは、何ともリッチな体験でした。詳しくはこちら で 。(トコ)
Foundation
Beyeler Photo: toyoko ito
6月25日
スレイド・スクール訪問
スレイド・スクールと言うとリチャード・ハミルトンにポーラ・レゴ、最近ではレイチェル・ホワイトリードやモナ・ハトゥームと一流揃いのOBリスト。今回はその名門の花形コース、MFAの卒業展に同コースに在籍中の伴美里さんの案内のもとお邪魔しました。 他校に比べて硬いという先入観があったスレイドですが、実際には堅実さの中にも柔軟性が見られる作品が多く、バランス良く解放されている感じでした。バンジ−ジャンプをパフォーマンスとして披露している学生や、油彩に囲まれた部屋にバスケ用のゴールを入れてしまう体育界系のノリの作品があったり、中庭にジャングルジムのような形をした楽器を忍ばせる学生がいたりと、自由な発想が至るところに感じられました。
Simon
Pericich Photo: toyoko ito ゲームセンターにあるコインゲームを使った作品。トークンの代わりに本物のお金が。トラファルガー広場から拝借したお金だとか。
そして今回目立っていたのが日本人留学生の存在。特に注目を集めていたのが、摩訶不思議なインスタレーションを発表していたTsunoda
Kaoru さん。作品は三千個もの透明なコップが山のように積まれたもので、その斜面に取り付けられたベルトコンベヤー伝いにピンク色の玉が運ばれては頂点で弾けるというご機嫌な作品。ポップした玉がコップに入る瞬間のパチンコ的ノリ、子供の頃に行った縁日を思わせるお祭りムード。一度見たら忘れられないユニークな作品でした。 同じく案内をしてくれた伴美里 さんも、鑑賞者を懐かしい世界に導くのが上手な人。彼女はこの憂鬱なロンドンで描いているとは思えないくらい清々しい色彩で、日常の何気ない風景を描いています。すでに購入希望者がいるという今回のメイン作品は、ピンクとイエローが空気のようにキャンバスを漂うポエティックな作品。近寄ってみると、淡いペイントの影から少女や女性の姿がアウトラインとなって浮かび上がってきて、遠い記憶がおぼろげに蘇ってくるあの感覚に似た印象を受けました。(トコ) 詳しくは大学 のホームページで。
Misato
Ban Photo: toyoko ito 一見抽象画のように見えて、日常の様々な風景がその中に隠された伴さんの作品。下の写真はディーテール。
6月25日
英国ポップ・アートの大物と…
英国ポップアートの基礎を築いた画家のひとり、コリン・セルフ 氏の個展のオープニング・パーティーにお邪魔しました。場所はホワイト・キューブのすぐ裏手にあるジェイムズ・コールマン・ギャラリー 。
いまでこそ80点以上もの作品がテート入りしているセルフ氏ですが、スレイド時代の彼はかなりの問題児だったとのこと。学内「ワースト・スリー」に数えられた一人で、「たぶん落第」だろうと大学から申し渡されていたらしい。そんな彼を見い出したのが、当時RCAで大暴れしていたピーター・ブレイクやデイヴィッド・ホックニーらで、セルフの作品を一目見て気に入って買ってしまったというエピソード。65年に開かれたセルフ氏のロンドン初個展の来客者リストにはホックニーらの他、ルシアン・フロイドやロン・キタイ、ブルーア・ティドマンなど今日の大御所の名がずらりと控えています。
コリン・セルフ氏 ジェイムズ・コールマン・ギャラリーにて Photo:
tomoko suzuki 右手の白いテーブルに置かれた銀色のオブジェが、氏のお気に入りのチーズのオブジェ。見えにくくてゴメンなさい。
木曜の晩ももちろんブレーク やティドマン を初め多くの画家仲間がセルフ氏の応援に駆けつけました。2フロアーにまたがる展示室には、ポットヌードルの梱包用段ボール箱やら、ジャガイモが入っていた紙袋、朝食シリアルの箱など、そこら辺の台所から持ってきたような馴染み深い素材が沢山登場。これら粗末な素材と、その上に丹念に重ねられた色彩とのギャップがいいコントラストを成していました。 「美しいものを"discover"するのが僕の役目」と、セルフ氏は二、三日前にダンボールを踏んで作ったという即興作品の前で、未熟な私達に芸術論を語ってくれました。話題がお気に入りのステンレス製のオブジェ、カッティング・ボードにチーズとネズミが載った作品「The
Big Cheese No.1」に至ると解説にもさらに熱が入り、先端がラッパ状になっているナイフを見ながら、円形にしかカットできない電動鋸で切ったからこうなってしまったんだよ…と、偶然のハプニングがもたらした結果を楽しんでいる様子。気さくで柔軟で遊び心を大切にする重鎮にフォグレス一同感動のひと時でした。 (トコ)
6月16日
カレンダー更新
■ メジャー展示スペース (16件) ■イーストエンドの展覧会 (11件) ■テムズの南側 (8件)
6月12日
まとめてニュース
■ South London Gallery 去年の夏から改築のため休館していたサウス・ロンドン・ギャラリー(SLG) が、今月15日、新たな組織体制と空間をもって再オープンする。 オープニングを飾るのは、アメリカ人作家トム・フリードマン 。国際的に注目を受けている彼は、お菓子の箱とか雑誌の切り抜きとか、とりとめのない物を材料にハッとする作品を使っている作家。建物裏の庭では、ゴールドスミス・カレッジ の学生が企画したグループ展が同時開催される。詳しくはまた後ほどレポートで。
発砲スチロールでできた3メートル級の巨人。その足元には手のひらサイズの小人がいるのですが、見えるでしょうか?画像を拡大して見て下さい。 Photo:
tomoko Suzuki
■ エミンのネオン、ごみ箱から救出 モデルのケイト・モスのためにトレイシー・エミン が制作したネオン作品が、ロンドン東部のゴミ捨て場から見つかった。 “Skip”と呼ばれる大型ゴミ用回収箱に放り込まれていたのは、「Kate
Kin」と綴られたネオン作品。これはエミンが使っているガラス職人が保管していたもので、まだモスの手には渡っていなかったもの(3年も保管されていたらしいが)。捨てたわけではなく、誤って放り込んでしまったという話だ。 BBCの記事 ■
爆破テロの駅が展覧会会場に 191人の死者を出したマドリッドの列車爆破テロの駅のひとつアトーチャ(Atocha)駅 で、いま写真展が開催されている。 この展覧会は、今月2日から始まったマドリッドをあげての写真フェアPHotoEspana
2004 (PHE04) で開催される51の展覧会のうちのひとつ。アトーチャ駅ではDaniel Blaufuksの写真シリーズ「Collected Short
Stories」が展示されている。 イベント全体のテーマはスペイン語で「Historias」、“歴史”を意味する言葉。現代アートにおける写真、映像を使ったドキュメンタリー系の作品が展示の中心を占めている。 会場はアトーチャ駅の他、プラド美術館、レイナ・ソフィア国立現代美術センターなどの美術館、商業ギャラリーも20軒ほど参加している。エンリケ・メティニデス、リネケ・ダイクストラ、マーティン・パー、アラン・セクーラなど最近注目されている作家の写真から、ビル・ブラント、アンリ・カルティエ・ブレッソン、ロバート・フランクら大家の写真まで、総勢170名の作品が紹介されている。 ロンドンではArt
Fortnight、マドリッドではPHE04、なかなか充実したひと月になりそうだ。(トコ) BBCの記事 PHotoEspana
2004のサイト Daniel
Blaufuksのサイト Art
Fortnightについては4月28日 付けの日誌で Art
Fortnightのサイト
6月10日
イーストエンド展覧会めぐり
■ Stella Vine @ Transition まずはチャールズ・サーチの最近のお気に入り、ステラ・ヴァイン (Stella
Vine)から。昨日の晩、イーストエンドにあるTransition で彼女の初めての個展が始まった。ガールズバンドの元祖レインコーツのボーカル、ジナ・バーチ がライブを行うなど、小ぢんまりとした会場は熱気ムンムン。 故ダイアナ妃、レイチェルに続くヴァインの絵の対象は、「鉄の女」ことサッチャー元首相とそのご主人のデニス、99年に亡くなった詩人テッド・ヒューズ、カトリーヌ・ドヌーブ、PJハーヴェイといった面々。ヘタウマ系筆遣い、少女系カラーで描かれた絵には、今回もおなじく、口から血を垂れ流した人物の存在が目立つ。
Stella
Vine, Auntie Ella, 2004, Courtesy: Transiton Gallery お気に入りの「カトリーヌ・ドヌーブ」の横でポーズしてくれたヴァインさん。 Photo:
toyoko ito
英国アート界の「ゴッドファーザー」のおかげで、いちやく注目の的となったヴァインさん。感想を聞いてみたところ、「こないだオックスフォード・ストリートを歩いていたら、三度もサインを下さいって声を掛けられて驚いてしまいました」と、セレブになってしまったことにまだ馴染めない様子。7月4日まで。ヴァインさんの作品についてはフォグレス内の「New
Blood 」展レビューをご覧下さい。。本日発売の『Luca 』と6月6日発売の『Studio
Voice 』にも載っています。
■ Alice Neel @ Victoria Miro Gallery こちらの展覧会は、つい先週までロンドンに滞在していた『Luca』の編集さんが絶賛されていた一本。'84年に他界したアリス・ニールは、20世紀を代表する肖像画家と言われながらも、ヨーロッパでの個展は死後20年もたった今回が初めてという画家。 今回の展示では、いわゆる「正統派」の肖像画、ポーラ・レゴやルシアン・フロイドらをはるかに超えて、モンドリアンやマチスの時代にまで遡ったかのような油彩が10点ほど展示されている。ニールのモデル達は、作家やコレクターといった業界内の人がほとんど。とはいえ今回の展示作品には、一目で誰と分かるような有名人はいないため、受ける印象は肖像画というよりはモデル不詳の人物画といった感じだが、それでも見ごたえは十二分。7月31日まで ■
Sarah Morris @ White Cube 結論から言うと、二階の映像が良かった。今回の作品「Los Angeles」は、ロスの一大イベントであるアカデミー賞の授賞式に時期をあわせて収録したもの。これまで通り、作品には建築に対する彼女の強い関心が伺えるが、今回はこれに超豪華ハリウッドスターが加わり、建築と幾何学模様とセレブを足して三で割ったような作品に仕上がっている。生活臭さを一切排除した、リッチでハイソで華麗なシーンの数々。その徹底振りは、「ロスのPR映像?」と聞きたくなってしまうほどだ。 一階のメイン展示室には、彼女のトレードマーク作品とも言える、パッと見、三次元ワイヤーフレームを思わせる抽象画が展示されている。抽象画という時代遅れの分野に留まりながらも、オレンジやグリーンの蛍光色が眩しい色使い、グロスペイント仕上げのフラットで光沢のある表面のせいか、絵画には現代的な雰囲気が漂っている。7月10日まで。 (トコ)
6月7日
デミアン・ハースト、 死骸遺棄騒ぎ
彼の手にかかると屠殺もアートになるデミアン・ハーストが、牛の頭や体を路上に放っぽり出して、アート業界のみならず世間一般でも「悪ぶり」を発揮していたようだ。 動物の残骸が放置されたのは、英国で最も美しい村といわれるコッツウォルズ地方にある、ハーストのスタジオ付近の路上。放置された期間は、バンク・ホリデーが加わり三連休となった5月末の週末を含む6日間。 住民の反感は、死骸から放たれた悪臭に主に集中。そのひとり、クリーブ・イーグルズさんは、「へどが出そうでした」「酷かった日曜の晩なんて、臭いで家中みんな吐き気がしていました」と、インディペンデント紙にコメント。 遺棄された死骸の真向かいに住むカミラ・ブーンさんも、「庭の端にいても悪臭がしてきて、もう本当に気持ちが悪かったです。プラスチックの箱の上にハエがうじゃうじゃとたかっていて、動物の残骸でいっぱいでした」と、同紙に状況の酷さを訴えている。 これに対しハーストの会社Science
Ltdのスタジオ・マネジャーは、バンクホリデー前の金曜日に業者が残骸を回収しに来るはずだったが現われなかった、と6日間も放置することになった理由をタイムズ紙に説明。
現在、作家側に落ち度がなかったかどうか、商業基準局(環境衛生局と一部で報道)の調査員による取り調べが行われているようだ。(トコ) The Independentの記事 BBCの記事
6月7日
ブリット・アート、灰に
!(続、続報)
先月下旬にロンドン東部の美術品管理会社の倉庫が火事になった件で、火災発生直前に倉庫が盗難にあっていたことが警察の取調べにより明らかになった。 盗難にあったのは全34ユニットで構成された倉庫のうち、時計や携帯電話、コンピューターなどが保管されていた小さめの収納倉庫ということ。ここには高価な美術品は保管されていなかったとのこと。 警察側は「火災が故意に起されたかどうかについては、まだ確証の段階に至っていない」とコメントしているが、出火の原因として放火の可能性もあると語っている。 この火災による被害総額は推定100億円相当。去年のターナー賞候補チャップマン兄弟の「Hell」、トレイシー・エミンの代表作2点、デミアン・ハーストの絵画十数点を含む、ブリットアートの名作が二日間の火災で灰になった。(トコ) BBCの記事 The
Independentの記事 フォグレス内の関連記事: スペシャル・レポート「ブリットアートの傑作が灰に 」 日誌5月26日第一報 、続報
6月1日
展覧会レビュー
■ 話題の「ヘレン・チャドウィック 」展を、クマさんのフォト・レポートでご紹介。デミアン・ハーストらYBAの先駆けとしてみなされているチャドウィックは、英国の現代アートを語るには欠かせない存在。本展にはそんな彼女の代表作が勢ぞろい。フォグレスお勧めの一本です。 ■ デミアン・ハーストとデイヴィッド・ベイリーの共同作品展「The
Stations of the Cross 」のレビュー。本展は6月5日までウェストエンドのガゴーシアン(Gagosian)で開催中。
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