8月26日
まとめて展覧会
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リクリット・ティラヴァニャ@Serpentine タイカレーを鑑賞者に振舞うという一風変わった作品で、90年代に日本を含め世界的に有名になったリクリット・ティラヴァニャ 。でも英国人は日本人ほど食意地がはっていないのか、それともセルフサービスがいけなかったのか、「コアのない展示」とか「嘘っぽい」とか、今回の個展はかなり不評。展示終了ぎりぎりになってしまったが、その品定めをしに会場にお邪魔してみた。サーペンタイン の展示室にあったのは、「Less
Oil More Courage」と書かれた油彩など小品幾つかと、彼のNYのアパートを原寸大で再現した建物二軒のインスタレーション。家はそれぞれ、バス&トイレ&キッチン付きのワンベッドルームフラットで、火もつけば、水も出る。家具や電化製品も、冷蔵庫、電子ジャー、ポット、テレビ、DVDプレーヤー、ベッド、ソファー、テーブル、椅子、食器棚……とひと通り揃い、鍋釜食器類も水切りかごにてんこ盛りになるほど沢山。コーヒーもインスタントではなくフィルター式だし、コンロもオーブン付電磁調理器と、たった二ヶ月の展示ながらもウチよりも立派。
参加型アートの究極ともいえるこの展示。ソファーに座って映画を見るのもよし、腹が減ったら料理するのも良し、満腹になったらベッドでじゃれるのも良し、一汗かいたら風呂に入るのも良し、と何でもOK。そのうえ、電気代や水道代を気にする必要もなければ、冷蔵庫の中身もギャラリーが補充してくれる。6時になったら追い出されるというデメリットはあるものの、かなり魅力的な条件。 しかしその魅力にもかかわらず、所詮は「見世物小屋」。窓の外からはたえず好奇の目がのぞき、人がノックもせずにずかずかと入ってくる。よって当然のことながら、ソファーで快適に寝そべっているのも、料理を作っているのも、そのほとんどがギャラリーのバイトの子たち。私も、ギャラリーに来てまで料理をする気は全然ナシと有難くご辞退。いま考えてみると、一番美味しい思いをしたのは、バイトの子たちだったのだろう。(トコ) 8月21日で終了
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サーペンタイ・パヴィリオン ティラヴァニャのキッチンをさっさと後にして私が向かったのは、カウンターで「サンドイッチとカプチーノ」と言えばそれが出てくる、カフェ付きのサーペンタイン・パビリオン 。こちらは前にプレビューでも紹介したアルヴァロ・シザ とエドゥアルド・ソウト・デ・モウラ による建物だが、例年の例に漏れず今年もまた素晴らしい。ケンジントン・ガーデンという周囲の環境と建築が一体化しつつも、フォルムが圧倒的な存在感を放つという、優れた建築家ならではの腕を見せつけている。 それにしても同じ木という素材が、作り手によってこうも変わるとは。ここにはいい香りのするキッチンも、ソファーもベッドもテレビも、寛ぎのひと時を押し付けるものは何もないが、開いた窓からは風がそよき、ガラスをすかして緑がのぞき、天井は外にいるかのように高く、と贅沢なくらい快適だ。仕事の合間にリフレッシュをもとめてギャラリーに来る鑑賞者の心理をよく心得ている。(トコ) 10月2日まで
Photo:
Toyoko Ito
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ハムステッドの椅子 こちらはサーペンタイ・パヴィリオンとは違って、自然と融合しているとは決して言えないものの、アートならではのシュールとユーモアを120%発揮。すでに設置後二ヶ月も経つのでご覧になった方もいるかと思うが、ハムステッド の丘に高さ9メートルの椅子とテーブルが出現し、公園を訪れる者を謎に包んでいる。 物書きに人気があり、詩人キーツの家からもそう遠くないパーリアメント・ヒル に設置されたこの作品のタイトルは、「The
Write r」。作者のジャンカルロ・ネリ によると、ライターの孤独を表そうとしたものらしく、実際に緑の海原にポツンとたたずむその姿には寂寥感を感じなくもないが、間近で見るとこの印象も変わり、ライターの尊大さのシンボルのように見えてくる。
Giancarlo
Neri Hampstead Heath Photo: Chie Konishi
でもピクニックを楽しみに来た子供やカップルには、ライターも、孤独も、尊大も、どうでもいいこと。自転車でひとっ走り行ってきたという小西智恵によると、「イスの脚に落書きがしてあったり、子供たちがかくれんぼに使っている光景が目立った」とのこと。ちなみに彼女自身は「この後これがローマに送られると聞き、その作業の大変さを考えてばかりいた」とか。10月上旬まで設置されているそうなので、ピクニックがてらに是非ご覧頂きたい。(トコ)
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ワークショップ2 @ SLG 最後は、サウスロンドンギャラリー で開かれた高橋知子 とエラ・ギブス のワークショップ。入口で思わず尻込みしてしまったこの日のテーマは、高橋氏のサーペンタイン・ギャラリーでの展示を思い出させる「遊び」。ルールは、ギャラリーにあるものなら何でも使って良し、くじに書かれた指示に従って遊ぶこと、の二つ。さっそく引いてみると、そこには「目的なしに遊べ」との指示が。 「目的なしに遊べと言われても…」と内心ブツクサ思いながら人間彫刻のように立っていると、同伴してくれたパフォーマンスアートを得意とする小西が、床に落ちていたビニールテープをとり、私の腕に巻きだすという思いもかけない行動に。さらに隣りの子供やオバサンも巻き込み、あれよあれよという間にみんな自由を奪われた状態に。しばらくの間おしくら饅頭のようにみんなで戯れ、みごとに課題の「目的なしに遊べ」を達成。みんなで一斉にテープから抜け出し、もじゃもじゃになったテープを会場に飾らせていただいた。(トコ)
Photo:
Chie Konishi &Toyoko Ito
8月26日
余談…
■ 『美術手帖 』(9月号)に、ヴェネツィア・ビエンナーレ国別展示についての記事が掲載されました(P48〜51)。同号掲載の別特集「海外で見る・見せる・つくる!」の英国・アイルランド編も担当させていただきました(P110〜111)。 ■ 『Studio
Voice 』(9月号)に、同じくヴェネツィアの韓国館についての記事が掲載されました(P27)。
8月18日
まとめて展覧会
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Eng-er-land @ Gallery 102 まずは久々のティー・ビルディングからで、去年チャールズ・サーチによって一躍時の人となったステラ・ヴァイン など作家8名が参加しているグループ展「Eng-er-land 」。 変に区切られたタイトルが、フットボールの熱狂サポーターの掛け声を思わすこの企画。展示室には 、スポーツバブ美学を具現化するように、英国が誇るシリコン巨乳モデルのジョーダンのグラビア(ラッセル・ヘロン )や、白衣の天使からグラビアガールへと転身したアビー・ティトマスの油彩(ステラ・ヴァイン )など、タブロイド紙のページ3ガールっぽいノリの作品がずらり。
(上)Russell
Herron (下)Catihie Pikington Photo: Toyoko Ito
こちらの企画を担当しているのが、『ARTY 』というミニコミ誌を発行している団体で、そのエディター、キャシー・ロマックス はイーストエンドにあるトランジション のギャラリストでもある。そのせいか今回の作家も、彼女のギャラリーでサーチの目に留まったステラのほか、そちらの作家がほとんど。
ちなみに、以前フォグレスの取材に応じてくれたステラ は、話題を呼んだ「New
Blood 」展後、自分のギャラリーを畳んでスペインに行っていたが、数ヶ月まえに英国に戻り、6月にメイフェアのハミルトンズ で個展を開催した。売れるとはこういうことを言うのだろうか、ギャラリーの格が上がったばかりか、小振りのキャンバスが一辺2メートル級へと変わり、価格も沸騰。サーチが買った時の600ポンドから8,000ポンドと13倍以上に跳ね上がっていた。(トコ) 050805
- 050827 Artyについてはこちら で
Stella
Vine (上)Abi Red Shoes (下)Spidey (Hamiltons)
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Private View: forty years on @ Rocket 同じくティー・ビルディング 内。今年5月にマーティン・パーの個展で華やかに移転オープンを飾ったロケット も、英国にフォーカス。時代は60年代で、パーの展示の時と同じく、書籍と作品の二部構成。 企画の要になっているのが、65年出版の美術書『Private
View 』で、その原本20冊を販売。60年代ブリティッシュアートの金字塔であるこの本の執筆者は、ホワイトチャペルアートギャラリーの名ディレクター(52〜68)として名を残すブライアン・ロバートソン (2002年没)と、高名な美術評論家ジョン・ラッセル のふたり。写真は、エリザベス二世の妹で恋多き王女として知られるマーガレット王女の夫となったスノードン卿 。一方、絵画と立体で構成された展示の方は、同書籍の最終章で取り上げられた作家群から11名を抜粋。アンソニー・カロ やバーナード・コーエン 、フィリップ・キング などによる、ミニマルな抽象作品が展示されている。(トコ) 050710
- 050905
展示風景 Private View Rocket Photo: Toyoko Ito
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Larry's Cocktails @ Gagosian 場所は変わって、ピカデリー裏手のヘドン・ストリート。あの敷居の高いガゴーシアン で、ロイヤルアカデミー・スクール の卒業生たちによるグループ展が開催中。 木馬からネズミの剥製まで、チープとショックがミックスした展示は、ガゴーシアンらしからぬイーストエンド美学。家具とメリーゴーランドとターンテーブルが一体化したグラハム・ハドソン の古道具風の立体、白骨化の途中とでもいうように毛がむしられたニール・ハモン のウサギやネズミの剥製と、キッチュな作品が目立つが、それらがスペースに負けないパイプオルガン級の派手さをもって展示されている。 聞いたところによると、この企画の実現には、今回の展示作家でもあり、ここでテクニシャンとして働いているデイヴィッド・エルサー のプッシュが大きかったとか。ビクトリアミロ・ギャラリーのテクニシャンだったチャップマン兄弟を思い出させる成功談だ。(トコ) 050812
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(上)Graham
Hudson (中)Divid Ersser (下)Neil Hamon Photo:
Toyoko Ito
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The Way We Work Now @ Camden Arts Centre ノースロンドンのカムデンアーツセンター では、「素材」に関心をよせる若手アーティスト7名を集めたグループ展を開催中。絵画、立体、インスタレーションで構成された展示は、DYI感覚あふれるローテクな作品が中心だが、そのなかで一際光っていたのが、泡という意外な素材を使ったロジャー・ハイロンズ のスカルプチャー。白い泡が、発砲スチロールのようにS字を描くこの 作品、仕掛けは思ったよりシンプルなようで、陶器の入れ物の部分に洗剤溶液を入れ、ポンプを使ってそこにゆっくりと空気を送り込んでいるだけ。見るたびに形が微妙に変わる生きたスカルプチャーだ。(トコ)050722-
050911
Roger
Hiorns Fleet Street (details) 2005 Camden Arts Centre Photo: Toyoko
Ito
8月8日
ヴェネツィア・ビエンナーレ国別編2
大変お待たせ致しました。ヴェネツィア・ビエンナーレ国別展示レポートの続編 を掲載しました。
8月2日
流水アート 展示中止に
便器や天井のライトがアートとしてもてはやされる今日、流しの蛇口がアートになってもべつに驚きもしないが、水まで欲張ってしまったせいか、これがけっこうな騒ぎに。 英国最大手の水道事業所テームズ・ウォーター社からの警告により、7月29日にやむなく展示を中止することになったこの作品は、ロンドン在住の作家マーク・マッゴーワン(Mark
McGowan)による「The Running Tap」。 サウス・ロンドンにあるハウス・ギャラリーの台所の蛇口を使って、一年間水を流しっぱなしにするという作品だったが、蛇口を閉めなければギャラリーへの水の供給を止めるという同社からの通告を受け、予定を変更。展示一ヶ月にして中止になった。 アートいう名のもと流された水は、全部で800,000リットル。これはイギリスのビールの単位パイントに換算すると、1,400,000杯分。日本のペットボトルの小サイズ(500ml)に換算すると、1,600,000本分。水撒きに使った場合、ロンドンのお隣のサリー州の芝生面積半分をカバーする分量だという。 「みんな水を無駄にしているじゃないか。僕のはアートだよ」。とはこの作品の生みの親、マッゴーワン氏の言葉。 彼の言い分によるとこの作品は、水を流しっぱなしで歯をみがいたり、大した量もないのにすぐ洗濯機を回したりと、水を無駄づかいする人々にあてた忠告のメッセージであり、立派なアート。 だが、面白いことに、水道局の見解はまったく別。「アートと呼ぼうが、許すわけにはいかない」。 「水漏れの修理とか、もっと大切な仕事がたくさんあるので、法的手段に訴えなければいけなかったのが残念です。時間の無駄であるとともに、お客様のお金の無駄づかいでもあります」。 実際、この作品に憤慨した人は少なからず。水道会社だけでなくギャラリーにも苦情がたくさん寄せられ、そのなかには、蛇口を閉めなかったらギャラリーを爆破するという穏やかじゃない文面もあったという。 このお騒がせの作家。実はこちらではちょっとした有名人で、二年前にはゴールドスミスカレッジから首相官邸まで、路上の落花生を鼻で転がしていくという突拍子もないパフォーマンスを披露。その大義名分は、学費の値上げに抗議。 その前年のクリスマスには、ロンドン南のエレファント&カースルから東のベスナル・グリーンまでの道のりを、歩道に横たわってゴロゴロと転がっていった。メッセージは、クリスマスくらい清掃者にやさしい心を。 毎回パフォーマンスを発表するたびにメディアの注目を集め、二年前に若手対象の公募展ニューコンテンポラリーに入選したときには、展示室に作品の映像とともに、それを報じたたくさんの新聞記事が作品然として貼られていた。 今回の展示は中止になったものの、報道がPR効果となったのか、アメリカから蛇口と流しを買いたいという問い合わせが来ているという。売値は1,500ポンド(約30万円)だとか。 それにしても、ただの蛇口と流しを買いたいという客も客だが、大量の水を無駄にしてぬけぬけとアートと言う作家も作家。またそれに対して、「何でもアート」を真に受け、そうかもしれないなあ〜なんて思ってしまう周りも周りだ。 水の無駄づかいを指摘したいから、手っ取り早くそれをオーバーに実行して、大量の水を無駄にする。そして、アートの定義があやふやなのをいいことに、アートだと言って周囲を封じ込める。 同じゴールを達成するのに、そこまで水を無駄にしなくてもいい方法もあっただろうが、そんなのもお構いいなし。実際、この水道会社は水のリサイクルを提案しているが(おそらく噴水のような形で)、作家はそれを拒否。だってアートだから。 しかし、結果的にこれだけ話題になって、人々が注目したのはどちらだろうか。作家の狙いどおり、私たちの水の使い方だろうか。それとも、マッゴーワンというお騒がせのアーティストだろうか。(トコ) 参考資料 今回の作品について: BBCの記事 The
Guardianの記事1 、記事2 過去の作品について: BBCの記事1 、記事2
8月2日
余談…
ここのところあまり更新できなくてすみません。書いてからだいぶ時間が経ってしまいましたが、現在他誌で掲載中の記事について少し。■アート・リンゼイ インタビュー 『Studio
Voice 』(8月号)の特集『アート界最後のカリスマ!? マシュー・バーニーの世界』に、リンゼイのインタビュー記事を執筆しました。この記事は、以前フォグレスで紹介したリンゼイとバーニーのコラボ作品『デ・ラマ・ラミナ(De
Lama Lamina)』について、トークの時には聞けなかった話を改めて聞いたものです。コラボの経緯やパフォーマンスの裏話などを細かく語ってくれました。ちなみにフォグレスの記事はこちら です。■ガブリエラ・フリドリクスドッティ
in Venice 『DAZED&Excite 』に、ビョークとのコラボが話題になった、今年のヴェネツィア・ビエンナーレ、アイスランド館代表の フリドリクスドッティについての記事を書きました。彼女は、ドローイングやスカルプチャーから大掛かりな映像制作まで手がけるマルチな作家です。この春にはアイスランドのフェスティバルで、テートモダンのキュレーター、ジェシカ・モーガンの引き合わせのもと、マシュー・バーニーともコラボ。今後押さえていきたいひとりです。(トコ)
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