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久々の更新です。たまりにたまった記憶の山から、印象に残った展示を紹介していきます。
■ まずは日本人ネタからで、前にも紹介したMatsuriのメンバー企画によるダニー・サングラ(Danny
Sangra)の個展。ウェストエンドのど真ん中、ソーホーにある人気セレクトショップ、ピニール・アイ(The
Pineal Eye)にて開催。鏡張りのクールな店内には、ヤクザ漫画とウォーホールとリキテンシュタインを足して三で割ったようなポップな絵画が、小振りながらも噛み付くような迫力で展示されている。
帰りがけにチラッと見かけたサングラは、まだ25そこそこの若手だが、クールな作風がファッション界のトップデザイナーの間ですでに人気だそうで、ステラ・マッカートニーやマーク・ジェイコブスらとコラボをしている。人だかりでまったく見れなくて残念だったが、オープニングのライブでパフォーマーが着ていた服も彼がペイントしたものだとか。この秋のロンドンファッションウィークで発表されるという噂。詳しくはこちらで。
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Danny
Sangra展の展示&オープニング風景
Photo: Toyoko Ito |
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■こちらは「Dazed & Confused」や「Numero」などの雑誌でのお馴染みのデザイナー兼イラストレーター、ジュリー・ヴァーホーヴェン(Julie
Verhoeven)の展示。経済誌『The Economist』の出版社ザ・エコノミスト・グループの自社ビル一階のロビーと、屋外の広場を使っての展示になっている。
すごかった前評判に反し、蓋を開けてみると意外に地味なショー。室内の展示は小振りのスカルプチャーが1点のみ。屋外の作品もビルの柱に施した‘装飾’だけ。まさかこれだけ…と一瞬拍子抜けしてしまったが、よ〜く見ると、ディテールが凝っていてかなりいい。特に、この柱の‘装飾’、一見粗雑に見えながらも、有機的なフォルムの絵画やドローイングに貝殻や陶器の破片が埋め込まれ、そのデリケートな素材が広場のコンクリートといい対比をなしている。イメージ的には少女時代の夏の思い出といったところ。雨に曝すにはもったいないが、そこがまた儚くて良かったり。9月15日まで ウェストエンドのライフルメイカー(Riflemaker)でも9月11日から個展が始まる。
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Julie Verhoeven展の展示風景
Photo: Toyoko Ito |
■ ヴァーホーヴェン展開催中のこのエコノミスト・ビル(The Economist Building)。建築家がピーター&ロバート・スミッソンだということは知っていたが、私にはどう見ても‘冴えない’オフィスビル。だから何日か前にミケランジェロ・アントニオー二の「欲望(BLOW-UP)」(66年)を見いて、冒頭のシーンのロケ現場に使われているのを発見した時にはとてもびっくりしたが、60s金字塔の映画に使われるくらいだから当時はかなり脚光を浴びていたようだ(ちなみにここが使われたのは、道化者のような格好をした若者達がジープに乗って登場するシーン)。
実はこの映画の展覧会が今、レスタースクウェアのフォトグラファーズ・ギャラリーで開かれているのだが、これがなかなかのお薦め。
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麗しきデビット・ヘミングス扮するカメラマンが主人公のこの映画。その一般的な見方は、売れっ子カメラマンとモデルの華やかな関係が時代のアイコンとなったスウィンギング60sをサスペンスで包んだ超スタイリッシュな映画といったところだが、映画論の分野では、写真という記録メディアの真髄に挑んだ作品として評価されているらしく、フォトグラファーズギャラリーの展示でもその点が強調されている。
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その焦点となっているのが、映画のなかで主人公のカメラマンが公園で撮った男女の逢引の写真(写真を実際に撮ったのはフォトジャーナリストのDon
McCullin ドン ・ マッカラン)。盗み撮りされたことに気づいた女が身体を張ってネガを取り戻そうとする執拗さに、「これは何かある」と感じとったたカメラマンがその謎を求めて写真を極限にまで引き伸ばしていく(これを英語で'blow-up'という)。引き伸ばされるにつれ、次第に抽象化していくイメージ。その過程で漠然と浮かび上がってくる新たな像。その像がカメラが捉えた真実であるのか、それともカメラマンの思い過ごしなのか。この展覧会では、カメラが捉える像の真偽性が、映画のショットと抽象画を通じて問われている。
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■ 場所は飛んでイーストエンド。こちらはホワイトキューブのあるホックストン・スクウェアから徒歩20分ほど北に行った倉庫街で開かれた「ジョージ・ポルケ(George
Polke)」という名の展覧会。大学出たての若手50名の作品を展示(12日で終了)。
作家には少々申し訳ないが、まずなんと言っても一番印象に残ったのが、この立派で美しい会場。これまで行ったどの倉庫よりも格段に大きくて、間口の狭いドアをくぐって中に入ると、なんといきなり膨大な量のガラクタに出迎えられる。が、そのガラクタが絶妙にこの大箱のスペースにもマッチしていて、高橋知子のインスタレーションじゃないが、まるでそれ自体が作品のように見えなくもなく、あっぱれ。
一方、作品の方は、場所の個性がこれだけ強いせいか、小屋サイズ日曜大工風の立体がゴロゴロあった割りにはいまひとつ印象に残らず少々残念。ただラッキーだったのが、二年前にスレイドの卒展で見た津野田薫さんのキネティックなスカルプチャーにまたお目見えできたこと。今回は木製の円卓にルーレットをセットして、それをガラスの蓋で閉じただけのシンプルな作品だったが、一見どこも動く部分がないように見えながらルーレットが断続的に回り続けるという、どこかSFめいた作品だった。スレイドの時の作品は来月25日までサセックス・バーン・アート・ギャラリー(Sussex
Barn Art Gallery)で見れるとか(→)。
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George
Polke展の展示風景
上)手前の宇宙飛行士風のスカルプチャーはアリステア・ベイリーの作品
下)津野田薫,
Photo: Toyoko Ito |
ちなみにこのショーのキュレーターは、デミアン・ハーストのスタジオに所属するルイーズ・オヘア(Louise
O'Hare)女史。展覧会のタイトルになっているジョージ・ポルケとは彼女が作り上げた架空の人物の名前だそうで、そのタイトルと展覧会が実際どう繋がるのかは全くもってピンと来なかったが、よくある若手のショーということで深く考えるのはやめた。8月13日をもって展示終了。くわしくはこちらで。
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■ こちらはみなさんもうご存知。上でチラリと触れたハーストの巨大妊婦像「The Virgin Mother」で、ロイヤル・アカデミーのサマー・エキシビションの出品作品として、5月から中庭に展示されていたもの。終了間際にやっと拝めた。この作品も、カウンティーホールのサーチギャラリーで前に見たハーストの「Hymn」同様に、臓器を見せるように体の表面が一部剥かれているが、ブロンズという定番素材がいけないのか、ドガのバレリーナを模したエレガントなポーズがいけないのか、単にこの手のエグい作品を私が観すぎてしまったせいなのか、巨大だということ以外に揺さぶられるものがあまりなくて残念。8月20日にて終了。
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Photo: Toyoko Ito
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■ 一方、山椒は小粒でもピリリと辛い(?)のが、ソーホーのLaz Inc.で見たポリー・モーガン(Polly
Morgan)のウサギの剥製。皮を剥いだわけでも、血や骨が見えているわけでもなく、ただウサギがクタッとしているだけなのだが、いたいけな小動物の死体がアートとして差し出されているところに胸が痛くなる。
実はこのモーガン、英国の美術界で剥製の人気がじわじわと高まるなか、その旗手としていま最も持て囃されている作家のひとりだという。あのケイト・モスも彼女のコレクターのひとりだそうで、噂によると、アオガラの剥製を数千ポンドで購入したばかりとか。地下の展示室にあったあれがそうなのか…。 (トコ)
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Photo: Toyoko
Ito
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