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4月15日 |
東京おのぼり日誌6:六本木、波の美術館で考える |
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作家8名で構成された展示は、白井美穂、佐伯洋江、祐成政徳、市川武史、竹村京、さわひらきなど日本の若手から中堅の作家に、エリナ・ブロテルス、ポリクセニ・パパペトルーら外国勢2名を加えたグループ展。ドローイング、写真、映像、立体、パフォーマンス、参加型インスタレーション…と様々なメディアが含まれ、今の美術表現の幅の広さが実感できる。また、作家各自にゆったりとした個室が与えられているため、個展のような落ち着いたムードで鑑賞でき、展示室も天井の高いホワイトキューブといい感じ。展示品もドメスティック感溢れる竹村京の刺繍を使ったドローイングから、祐成政徳のパブリックアートサイズの気球のようなスカルプチャーまで見せ所を押さえているのだが、気になるのがなぜこの8名かということ。 一つの枠組みに入れるからには、そこに何らかの共通項があるべきだと思うのだが、それが見当たらない。手元のパンフレットを見ても、「現代のアートの世界で活躍するアーティストたちを紹介する展覧会」としか書いていない。 文化事業が地域経済に貢献する重要な産業とみなされ、世界各地でビエンナーレ、トリエンナーレが短期集客型のテーマパークのように設立されている今日、そのコンテンツ提供者である「世界で活躍するアーティスト」は、実のところおそろしく増殖している。その挙句にカオスと化しているのが、私が普段いるロンドンから見える現代美術をめぐる現状なのだが、国を代表する美術館としてこのカオス収拾にもう少し積極的になってもよいのではないか。ただ漠然とこんな物がありますよと見せるだけではなくて……。なーんてことを考えた。(トコ) |
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4月12日 |
東京おのぼり日誌5:渋谷のワンダーとナンヅカ |
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渋谷のギャラリー二軒を訪問。最初はトーキョーワンダーサイトのオープニングで、マティアス・シャーラー、ステファン・ディーン、屋代敏博の3つの展示を鑑賞。ロンドン時代にfoglessを手伝ってくれていた、ギャラリーのスタッフの星野美代子さんに会場を案内してもらった。 最初の二人の展示者、シャーラーとディーンは、国際推薦人制度という国際舞台で活躍するアート界の専門家により選ばれた作家とのこと。グッゲンハイム美術館シニア・キュレーターにより選ばれた前者は、バチカンにあるローマ教皇庁の枢機卿の執務室をシリーズ化して撮った写真シリーズを発表。一方、ブラジル生まれNY在住の美術家のヴィック・ムニーズご推薦の後者は、築地市場や渋谷駅前の雑踏を赤外線サーモグラフィーカメラで撮った映像と、新聞の気象地図に色をつけた平面作品を並べて展示。前者は一定のフォーマットに則って被写体を類型学的切り口で撮るドイツによくあるタイプの写真で(トマス・シュトルート、カンディダ・へーファー、リカルダ・ロッガンなどがその好例)、後者は抽象的なパターンメーキングを一風変わった道具とソースを用いて行なったものになる。 そして残りのひとり、屋代敏博は、実力派の若手を紹介するシリーズ展「TEAM (Tokyo Wonder Site: Emerging Artists on Mezzanine)」に選ばれた作家のようで、銭湯や美術館の完璧なる空間にくるくる回る物体(本人が回っているのだとか)がSF映画のように写る写真シリーズ《回転回》と、東京の街をひたすら走る男(これも本人だとか)を撮ったモノクロ写真シリーズを展示。屋代の作品は今回初めて見たが、発想が柔軟で、どこかお笑いに通じる痛快さがあり、自分のみならず他人をも巻き込むパフォーマンス性や、アンティークなステレオスコープを使った捻りのあるプレゼンの仕方など、既存のカテゴリーに収まるまいとする工夫が今回の3名の中で一番強く印象に残った。 次の目的地は渋谷駅の反対側、いまもっともエッジーなギャラリーと評判のナンヅカ・アンダーグラウンド。会場で『スタジオボイス』編集部の岡澤浩太郎さんに会う。ここら辺は皆さんの方がよくご存知かと思いますが、ギャラリーオーナーの南塚さんは20代の好青年ながらも(若く見えたので勝手に20代と呼んでます)、「メディアレイピスト」と称しボーダレスな創作活動を展開する宇川直宏から、横尾忠則と並ぶ日本グラフィックデザイン界大御所の田名網敬一まで、癖のある作家を手名づけるやり手のギャラリスト。まだオープンして2年たらずというのに、今年3月にはスペースを拡張し、上海やニューヨークのアートフェアにも出展するというウナギのぼりの勢い。 ここの得意どころは今の日本の現代美術の代表ともいえる大衆文化に首までどっぷり浸かったサブカル系のアートのようで、今回の個展では、姉川たくのエログロ、バイオレンスを幼児性の強い表現で包んだドローイング/刺繍画を展示。ドローイングの部分はデイヴィッド・シュリグリーやスタンリー・ドンウッドに似ていると思ったが、糸にこめられたおどろおどろしさは姉川氏特有。髪の毛もそうだが、だら〜んと垂れているものには気色の悪い生々しいパワーがあるようだ。(トコ) |
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4月10日 |
東京おのぼり日誌4:渋谷区写真町人間交差点 |
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写真三昧の一日。一軒目は、『スタジオボイス』で紹介されていたイラク戦争帰還兵のショッキングな写真を拝みに恵比寿のMA2ギャラリーに。これを撮った写真家は、ルー・リードからブッシュ大統領まで、セレブ、政治家、芸術家など世界の著名人を長年撮ってきたアメリカのポートレート・フォトグラファー、ティモシー・グリーンフィールド=サンダース。ギャラリーの一階と二階の展示室に、戦争で身体の一部を失った元兵士が、「これが私ご自慢の一張羅(いっちょうら)」とでも言わんばかりに義足や義眼をスマートにつけて写っていて、なんとも異様。 英国で見かけるイラク戦争絡みの写真というと、血まみれになった兵士が路上にうずくまってがもがいているシーンなど、いわゆる戦争の凄惨な部分を真正面から見つめたフォトジャーナリズムが目立つが、兵士をファッションや広告写真のように撮ったグリーンフィールド=サンダースの写真はその正反対で、それゆえに心を掻き乱される。 恵比寿のあとは、オランダの某写真家からその噂を聞きつけた写真専門の新しいギャラリー、ホワイト・ルーム・ギャラリーを探しに原宿に。表参道で15分ほど迷った後に、表参道ヒルズ向かいのGYRE(ジャイル)というショッピングセンター内に入っているのを発見。シャネルやブルガリなど高級ブランドが入っているデパート内に画廊とは意外だったが、日本には、そごう、大丸、パルコなどデパートが美術展のホスト役を務めるという特有の伝統があったことをふと思い出す。 展示作品はジョエル・マイエロウィッツの映像《The Elements: Air/Water Part1》。しなやかな肢体の男性が飛び込み台から真っ青なプールに飛び込む。するとカメラが、その水しぶきや水面の揺れ、抽象模様に分解された水の粒子を爽快感たっぷりに捕らえる。そんな綺麗ではあるが中身が空っぽな映像が、三枚のフラットスクリーンに流れていたが、NYのグラウンドゼロを激写した《Aftermath》の後にこんな癒し系を見てしまうと、あれで疲れてしまったのかなあ…といらぬことが頭に浮かぶ。少し残念だったのがプレゼンの仕方で、映像なのに部屋は煌々と明るいし、後ろのマルタン・マルジェラからは暢気なBGMが聞こえてくるしで、真剣に見ているのがちょっと気恥ずかしくなった。 この日の夕方は、写真雑誌『PhotoGRAPHICA』の編集部があるエムディエヌコーポレーションを訪問。連載開始後1年目にして晴れて編集部の沖本尚志氏とご対面、「どうも、はじめまして…」などと訳のわからぬ挨拶をしたあとミーティングに入る。その後、沖本氏と一緒に近くの写真専門のギャラリー、RAT HOLE GALLERYのリー・フリードランダー「桜狩」展のオープニングに行くことにしたのだが、ここからが「人間交差点」の始まり。2月にロンドンで取材をしたマーコ・ボアがいきなり編集部の会議室に現れたり、『フォトグラフィカ』第7号で取材したスティーヴン・ギルとオープニングの会場でばったり再会するなど、舞台を東京に変えての偶然の再会が続いた。 ちなみにマーコはこの日、いま大学で執筆中の博士論文の取材のために沖本氏を訪問。その中の会話で私が後でここに来ると知って待機していてくれた。ギルの方は、EU・ジャパンフェスト日本委員会の写真プロジェクト「日本に向けられたヨーロッパ人の眼・ジャパントゥデイ」で3月に来日。鹿児島市立美術館での展示プロジェクトを終えて東京に戻ってきたばかりだった。これは後で本人から聞いたことだが、なんとマーコもギルと同じ「日本に向けられた…」の次期候補に決定し、早くも水戸で地元住民たちを撮影するプロジェクトを済ませ、今年秋には水戸芸で作品を発表するという。自分がロンドンで取材した作家が日本で受け入れられるというのは何とも嬉しいものだ。 その後RAT HOLEの会場で、EU・ジャパンフェスト日本委員会の菊田樹子さん、ライターのタカザワケンジ氏、編集者の土屋綾子さん、マグナムフォトの小川潤子さん、ユトレヒトの江口宏志氏、こちらのギャラリーのスタッフになっていた中島ふみえさんにも再会。会場にはフリードランダーの桜のモノクロ写真が満開。77年の初来日以来、79年、81年、84年と日本を訪れるたびに東京、奈良、京都、広島と日本列島を旅してファインダーに収めた桜の写真になる。日本人以上に桜を愛する異国人がとらえた儚い美。ご本人も来日して取材陣からフラッシュのシャワーを浴びていました。(トコ) MA2ギャラリー 作家のサイト(オフィシャル&ギャラリーHP):
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4月5日 |
東京おのぼり日誌3:京橋のクリちゃん〜清澄白河 |
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両シリーズとも「水」にちなんだ何とも爽やかな作品で、アートブックや写真集で有名なあのUtrecht(ユトレヒト)から出版された後者の写真集をすかさず購入し、サインをしてもらった。日本に帰ってからも時々、「本が出ました〜」というメールをもらっていたのでクリちゃんの活躍ぶりは耳にしていたが、思っていた以上の出世に目頭が熱くなる。 サインをもらった後は、ギャラリストの寺本一生さんからギャラリーを開いたきっかけや倉田精二の写真などについて話を聞く。新聞サイズのフリーペーパー『PUNCTUM TIMES(プンクトゥム・タイムズ)』も一部もらい、その編集レベルの高さに、「これがタダ?」とびっくり。本の目利きとして有名なUtrechtの江口宏志さんからは、昔ホンマタカシ氏のアシスタントだったという野川かさねの写真集「山と鹿」について話を聞いた。 PUNCTUMの後はタクシーで清澄白河の合同オープニングへ。まずは、3年前のヴェネツイアビエンナーレで話題を呼んだロンドンベースの作家、ルナ・イスラムの新作《The Restless Subject》を観にシューゴアーツに直行。日本語でびっくり板と呼ばれる「ソーマトロープ」を撮った16ミリ映像のインスタレーションを見る。このソーマトロープとは、板の表と裏に鳥と鳥籠の絵がそれぞれ描かれていて、それを速く回転させることによって、鳥が鳥籠に入ってるようなイリュージョンを創り上げる装置になり、セル画を早く動かすことによって動画の視覚効果を創りあげるアニメーション原理の元祖版のようなもの。ルナ・イスラムの作品にはこれまでにも映像メディアの本質を暴くような要素がしばしば見受けられたが、この作品はまさにそのど真ん中。
でも一番気になったのは白と黒のガッシュで創り上げられたキャンバス画の方で、平べったい女の顔から蛆虫が湧いたような一枚の絵画に釘付けになる。のっぺりとごっちゃりを組み合わせた形象的コントラスト、その対比が生むコラージュ的な立体的効果、バイオレントでサディスティックな表現が個性的で一度見たら忘れられない。なんとなくシュルレアリズムやキュビズムを思わせるところもあり、ローランド・ペンローズの蝶が女の目と口をついばんでいる油彩《Portrait of Valentine》やフェルナン・レジェのチュビズムと揶揄された《The Card Players》などを思い出す。 この日も例外に漏れず色んな人に会った。五木田氏の奥様の友絵さん、タグボートの石水美冬さん、Tomo Suzuki Japanの鈴木朋幸さん、元『美術手帖』編集部の阿部謙一さん、在ベルリンアーティストの竹村京さんと国立新美術館の研究員の橋本弥生さん、(株)アンテナの安田洋平さん、『Tokyo
Source』編集長の近藤ヒデノリさん、『ARTiT』編集部の皆さんなどなど。いやしくもオープニングを名刺交換の場として使わせてもらった後、Miyake
Fine Artの「フローリアン・ズースマイヤー」展、Zenshiの「小川泰」展、小山登美夫ギャラリーの「津田久美恵」展と「福永大介」展をさくっと見て『ARTiT』の柳下さんと一緒に退散。(トコ) |
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4月3日 |
東京おのぼり日誌2:有楽町でアートフェア東京 |
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108の画廊が集結した会場は、古美術、工芸、日本画、洋画、現代アートの全部が一箇所に集まった混在型とユニーク。現代アートに徹した欧米のフェアに慣れている私にとって、この寄せ鍋状態はよく言えば新鮮だが、お目当てのギャラリーが会場のわずか4分の1足らずという寂しい一面も。また、取り扱い作品も、絵画やオブジェなど、いかにも買いやすそうな小品が目立ち、コミッションワークやイベントなど思考を刺激する企画も目立たず(あったのかもしれないが気づかなかった)、とにかく「売り」重視という印象を受けた。アートの楽しみ方を「観る」から「買う」へと変えようとしているフェアなので、このアングルは理に適ってはいるのだが、物欲主義を煽るアートの見せ方(売り方)は、アートにより本質的な意味を求める私には寂しいものが…。プレスリリースに「アートを日本が誇る産業に」とあったが、芸術が完璧に産業化された日にはレビューなんぞ書く気も失せるだろうなと思う。 とはいえ、鴻池朋子(ミヅマアートギャラリー)、青木克世(レントゲンヴェルケ)、手塚愛子(ケンジタキギャラリー)など、ロンドンではまず見れない日本の優秀な若手の作品を見れたのは幸運なこと。また、ロンドン時代の知人にも同好会のようにたくさん合えた。
また、水戸芸術館にキュレーターとして就職した竹久侑さんにも再会し、foglessで2月にインタビューを掲載したマーコ・ボアが水戸芸で展示することになったと嬉しい知らせを聞く。さらに、昔、取材した美術家の青山悟さん、森美術館に入った国枝かつらさんにもばったり会う。その他、水戸芸の名物キュレーターの森司氏、『ARTiT』の小崎哲哉編集長、同誌編集の柳下さん、美術ライターの藤原えりみさんなど、日頃から誌面で名前を見かけていた方々に会う。 アートフェア東京のオープニングが引けた後は、新丸ビル7階にて開催されていたアートイベント「ニュートーキョーコンテンポラリーズ」の会場にお邪魔し、宇治野宗輝&ザ・ローテーターズのごきげんなライブパフォーマンスを見る。あとで知ったが、無人島プロダクションやARATANIURANOなど、このイベントの参加ギャラリー7軒は、経営者の年齢が30代前半から中盤と比較的に若く、小山登美夫ギャラリーやスカイ・ザ・バスハウスら東京を代表するギャラリーで修行を積んだ後に独立した、いわゆる第二世代のギャラリーになるとか。第一世代とてまだ10年数年足らずなのに早くも分家筋がこんなにあるとは、東京のアート業界がいかに猛スピードで成長しているかが窺われる。(トコ) |
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4月2日 |
東京おのぼり日誌1:銀座でスタンリー・ドンウッド |
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スタンリーには前にも取材したことがあったが、今年1月に「念願の日本で個展を開くことになった」と噂を聞きつけ、これは何とかして記事にしたいと思い、本人と『スタジオボイス』編集長の品川氏にコンタクト。2月にロンドンにて取材。これまでご法度だった顔写真を撮らせてもらったうえに、記事用に特別にアートワークまでも作ってもらい、スタンリーの全面協力のもと、現在発売中の5月号(特集は『グラビア写真の魔力!!』)に5ページのインタビュー記事が掲載された。 時差ぼけの頭で駆けつけた会場には、ファンらしき若者がうじゃうじゃ。それに紛れてテレビやラジオ局の取材陣がパーティーの様子を収録しているなど、さすがレディオヘッドの第六番目のメンバーと感心する。品川さんをはじめ、元『スタジオボイス』編集部の富田秋子さん、『ART
iT』副編集長の内田さん、フリーライターの松下幸子さんなど、雑誌関係者もたくさん来場し、スタンリーも顔がほころんだまま。その後、松下さんと一緒に二次会会場のカレッタ汐留47階に向かい、一年半振りに東京の夜景を眺めながらご馳走にありつく。アートフェアのパーティーも兼ねていたようで、フェアから流れてきた華やかな男女で会場はごった返し状態。日本到着翌日にして早くも、東京のアートシーンのただならぬ活気を肌で感じた。(トコ)
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fogless.net
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