3月7日

雑誌の休刊に寄せて…

 
 

『エスクァイア日本版』が休刊になると聞いた。

つい何ヶ月か前にマーティン・パーの記事を書いたばかりなので信じられなかったが、どうも本当のことらしく、早くも復刊に向けての署名運動が行なわれている(署名サイトへはこちらから)。

書いた記事はほんの数える程度だが、一番最初にもらった雑誌の仕事がその別冊にあたる『ルカ』というアート雑誌だったので、兄貴分の休刊には寂しいものを感じる。(ちなみに『ルカ』ももうないが)

もう三年以上前のことになるが、プロダクトデザイナーの吉岡徳仁さんをゲストに迎えて、編集部の斉藤氏と一緒にロンドンのアートブック系の書店を取材で廻ったことがある。

行く先々で雑誌を見せると、グロッシーなセレブマガジンといった印象のある英国版とは違って、日本版が専門誌も顔負けの徹底したカルチャーマガジンであることにみな驚き、「これが本当にあのエスクァイアなの?」と、よく聞かれたのを覚えている。

チャリング・クロス・ロードにあるクレア・ド・ロウエン・ブックス店長のクレアさんとは、未だに会う度にあの時の話が出るし、あの後よくお客さんに、「日本のエスクァイアに載ったのよ」と言って雑誌を見せていた。

同じく、フォトグラファーズギャラリー・ブックショップ店長のジョンからも何度も「いい雑誌だね」と褒められ、そのたびに日本にこういう雑誌があることを誇らしく感じた。そんな優れものの雑誌が休刊になるとは、なんだかとても残念だ。復刊を祈る。(トコ)

 

3月5日

「サメ」のつぎは「クジャク」?

 
 

レビューを掲載しました。今回の美術家ミルチェ・カントル(Mircea Cantor)は、久々にみるユニークな発想の若手。ティノ・セーガルやフィル・コリンズを初めて見たときのような新鮮さを感じました。(言い換えると、そういう作家がここ数年少なかったのですが…)

 

3月5日

余談 ・・・

 
 

■ ロンドンアート特集を担当した『Seven Seas』4月号が届きました。

「なぜロンドンが世界のアートの中心地になったのか?」この問いに答えるべくはじまった今回の特集。ケイト・モスの黄金彫刻で去年話題をまいたマーク・クインを筆頭に(表紙もマーク)、イーストエンドにいち早く画廊を開いたモーリン・ペイリー、英国5大コレクターのひとりデイヴィッド・ロバーツ、美術専門紙『The Art Newspape』rの新編集長ジェーン・モリスなどに取材をしました。アート・バブルが弾けた直後の取材。興味深い話が聞けました。巻頭の記事はデミアン・ハーストです。詳しくはこちらで。

 
Exhibition view
Peter Fischli / David Weiss
Objects on Pedestals
SPRUTH MAGERS LONDON

■ 『PHOTO GRAPHICA』4月号が届きました。

連載コラム「PORTRAIT'S: 欧州写真家の肖像」に、マグナムフォト発行の異色のファッション・マガジン第四弾を担当したリーズ・サルファーティを取材しました。また、パリフォトの特集に、自費出版の写真集『The Last Days of W』が話題沸騰のアレック・ソス、同じく新作『The Birthday Party』が好評のヴィー・スピアーズ、現在フォトグラファーズ・ギャラリーで新作『Avenue Patrice Lumumba』が公開中のガイ・ティリムにインタビューしました。メイン特集は若木信吾さん。今回の号からデザインがリニューアルし、アートディレクションを中島英樹さんが担当しています。詳しくはこちらで。

 
Exhibition view
Peter Fischli / David Weiss
Objects on Pedestals
SPRUTH MAGERS LONDON
 

3月3日

ウェストエンド徘徊

 
 

グリーン・パークからピカデリー、オックスフォード・サーカス付近のギャラリーを回りました。その中から、印象に残ったものを幾つか抜粋。最後の二つはもたもた書いているうちに、展示が終わってしまいました。ご容赦を。

SPRUTH MAGERS,
GRAFTON STREET
2006年にテート・モダンで回顧展が開かれたスイス人作家ユニット、ペーター・フィッシュリ&ダヴィッド・ヴァイス(Peter Fischli & David Weiss)の個展。家具や日用品をゴムで模った80年代後半の立体シリーズ《Rubber Sculpture》と、粘土で作った近作の両シリーズを発表。白い台座にのこぎりや引き出し、鎖、レコード盤といった美術らしからぬモチーフの「彫刻」が美術品然として展示されていて、なんだか異様だ。レディメードの使用ではなく彫刻としてちゃんと作っている点、一見このまま使えそうに見えて使えないところが面白い。この二人は80年代以来ずっと「日常生活の平凡で馬鹿らしいところ」にフォーカスしてきたそうだが、本当に、よくこんな退屈なものを彫刻にしたなあと感心する。まあそこがよいわけだが。「Objects on Pedestals」。3月28日まで。

 
Exhibition view
Peter Fischli / David Weiss
Objects on Pedestals
SPRUTH MAGERS LONDON


THE ECONOMIST PLAZA, ST.JAMES'S STREET
こちらは英国の時事情報誌『The Economist』で知られるエコノミスト・グループの自社ビル内の会場。イギリスの新進気鋭、アラステア・マッキー(Alastair Mackie)の個展が開かれているはずなのだが、会場のなかはもぬけの殻。わけがわからず帰ろうと思ったら、広場の手すりに座って日向ぼっこをしている同誌の編集員、もとい、チンパンジーを発見。よく見ると、実物大のブロンズ彫刻。ディテールがリアルでいい出来だったが、これが何を意味するのかは不明。その後に読んだパンフレットに、もしあの偉大なる進化が起きなかったならば今ごろ我々は…みたいな一文が書かれていて、私たちの姿だってことはわかったが、でもだから?と疑問が残る。これも馬鹿らしいのがポイントかな?確かに笑えるが。4月17日まで。

オックスフォード・サーカス裏手のデイヴィッド・ロバーツ財団(David Roberts Art Foundation、昔のGallery One One One)でもマッキーの個展を同時開催中。こちらはネズミだ。3月28日まで。

 
Exhibition view
Alastair Mackie
Mimetes Anon
THE ECONOMIST PLAZA

■ SIMON LEE, BERKELEY STREET
70年代から活動しているロス在住の作家ジム・ショウ(Jim Shaw)の個展を開催中。メディア混在の幅広い展示になっているが、見どころは地下で上映中の映像。おかっぱ頭に、シフォンのミニドレスを着た美女たちがお花畑のような創作ダンスを披露するのだが、画面全体に70年代頃のアメリカの低予算系ファンタジー映画のようなカルトさが漂っていて何とも独特。ショウはスピリチュアルな世界をメインテーマに活動してきた一風変わった作家のようで、代表作のひとつに、架空の宗教団体をつくる《Oism》というプロジェクトがある。この宗教の教義の柱となっているのが、女性の神格性と、時間は過去に向かって流れるという二点らしいが、怪しげな新興宗教に特有のやば〜くピュアな感じがこの映像にもにじみでている。上手くは言えないが。「The Whole: A study in Oist Integrated Movement」。3月28日まで。

■ WHITE CUBE, MASON'S YARD
戦後ドイツを代表する画家のひとりゲオルグ・バゼリッツ(Georg Baselitz)の個展。2007年のロイヤル・アカデミーでの展覧会のキュレータ、ノーマン・ローゼンタールがこの展示の企画も担当。白地にカラー、黒地にグレーと白と、色彩が2タイプにわかれた絵画シリーズを発表。オットー・ディクスの1924年の絵画《Portrait of his Parents》が基になっているが、親の肖像がレーニンとスターリンのそれに変わっている。バゼリッツの定番どおり、モチーフは上下さかさま。よく見ると、ズボンのチャックから一物が出ているが、昔の作品に比べるとエロさは控えめ。面白いのが作品のタイトルで、ソビエト建国の二大政治家からジェフとデミアン、マルセルとマウリツィオなど、美術家の名前に置き換えられている。アンディのタイトルが最高。ホワイト・キューブへのゴマすりか、ジェイク&ディノス、トレイシーなどここの作家の名前が目立っていた。「Mrs Lenin and the Nightingale」。3月21日まで。 

THE APPROACH,
MORTIMER STREET
ロサンゼルス在住の作家エヴァン・ホロウェイ(Evan Holloway)の個展を開催中。鉄の棒とコンクリートの小石を使った、超複雑な三次元ダイヤグラムといった感じのスカルプチャーを展示中。この作品は最終的にシリーズ100まで続く現在進行中の作品。そのうち、今回は51番から55番までの5点を展示。それぞれが、枝を大量につけた木のような形態をしていて、番号の数だけ枝の先に小石がついている。線が描くアブストラクトな模様と、石に描かれたプリミティブな顔との対比がなかなか。何とかの法則…という少しばかり科学めいた空気が漂う。気持ちだけだが。3月28日まで。

 
Exhibition view
Evan Holloway
THE APPROACH

MODERN ART,
EASTCASTLE STREET

展示最終日に駆け込んだジョナサン・ミース(Jonathan Meese)の個展。スカーレット・ヨハンソンのグラビアを貼りまくって、べとべとに絵の具を塗りたくった、ストーカーや精神異常者を彷彿とさせるようなグロい絵画と立体、トイレで怪しい行為をしているパフォーマンス映像などを展示していた。毛沢東など政治家の写真と一緒に使い古しのパンツが飾られた桶(赤ちゃん用ベッド?)は、ちょっとエミン系。これはイーストかサウスの小汚い倉庫か地下道あたりで見せてもらいたかった。高級画廊に転じたモダン・アートのスペースではビジネスの匂いがしすぎる。「Casinoz Babymetabolismn (Put Dr. No's Money in your mouth, Baby)」。2月21日で展示終了。

 
Exhibition view
Jonathan Meese
"Casinoz Babymetabolismn" (Put Dr. No's Money in your mouth, Baby)
STUART SHAVE / MODERN ART

PILAR CORRIAS, EASTCASTLE STREET
モダン・アート向かいのこの画廊では、サーチ・ギャラリーの「Unveiled」展でいま紹介されているイラン系アメリカ人、タラ・マダニ(Tala Madani)の個展を開催していた。頭のハゲ上がった親父が、パンツ一丁でえげつない行為をするドタバタコメディのような絵画シリーズを展示。画中に縞々模様が頻繁に出てくるが、これは二つの大戦時に敵の爆撃を避けるために船に対して用いられたカモフラージュパターンを応用したものだとか。シマシマパターンをかぶせてもオヤジの浅ましい姿は消えない。「Dazzle Men」。2月28日で展示終了。 (以上、トコ)

 

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このページの掲載内容

雑誌の休刊に寄せて…
(13.7)

「サメ」のつぎは「クジャク」?
(13.5)

余談 ・・・
(13.5)

ウェストエンド徘徊
*フィッシュリ&ヴァイス
*アラステア・マッキー
*ジム・ショウ
*ゲオルグ・バゼリッツ
*エヴァン・ホロウェイ
*ジョナサン・ミース
*タラ・マダニ
(13.3)